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kmiura このページをアンテナに追加 RSSフィード


日常生活では、どんな店屋の主人でもしごくあたりまえに、ある人が自分がこうだと称する人柄と、その人が実際にどういう人であるのかということを区別することぐらいはできるのに、わが歴史記述ときては、まだこんなありふれた認識にさえも達していないのである。それは、あらゆる時代を、その時代が自分自身について語り、思い描いた言葉どおりに信じ込んでいるのである。    『ドイツ・イデオロギー』

私家版・従軍慰安婦問題のリンク集(2008・8)

070720

[] 性奴隷という言葉のニュアンス 2 23:41 はてなブックマーク -  性奴隷という言葉のニュアンス 2 - kmiura  性奴隷という言葉のニュアンス 2 - kmiura のブックマークコメント

米国の現場報告。hizzzさんの記事へのトラバから。

intermission@無責任な関係

http://d.hatena.ne.jp/chimadc/20070718#p1

しかし、売春の現場は「これをして正真正銘トラフィッキング!」とか「これをしてイカレタ怠惰で無能な女の自堕落な職業選択!」と明確に出来るほど、その構造は単純ではない。例えば、誘拐されてはいないが、しかも自分で合衆国にきたとしても、そこにはそれ専門のブローカがいて、そこに然るべき金が絡んでいて、そこにはアガシの借金としてオーナーに身柄拘束されるケースは沢山あります。それはトラフィッキングの定義から漏れるのだろうが、事実上は一緒である。アガシ達は査証など当然なく、中国系のケースになると(ということは来るべき、或いはもう来ている北朝鮮アガシはこれ以上のワイルド差であること必至)パスポートもなしで、つまり出国する時点で「違法」を前提してつれてこられている。これが自分の意志であっても、彼女たちは犯罪の被害者か。それとも誘拐されていないのでトラッフィック被害ではないのか。仕事しようと自分の選択でやってきたものの、斡旋されてやってきたさきで置き屋にほぼ監禁に近い不自由さで働く韓国アガシトラフィッキングか?それとも自主的売春業者か?しかもそこで、販売促進という単純なオーナーの強欲からアガシがクラック中毒になった場合は?その中毒の延長で火事起こしたりクラック販売で捕まったアガシは主体的犯罪者かそれとも犯罪犠牲者か?私にとってはこのあたりが興味深いが。

トラフィッキング犠牲者に出す特別査証に関しては良く聞いていて、実は先日知人で移民系ソシアルサーヴィスの組織の人から、現在はやりのトラッフィッキング犠牲者を助ける仕事しないか?と持ち掛けられている程。私は、ホホホ、と笑っただけ。トラッフィキングの犠牲者であると自認しそれが公に認定され「法律上の恩恵を受けるには、まず「実に分かり易い」状況である必要がある。たとえば本当に誘拐された、とか未成年であるとか。それ以外自分がトラッフィッキング被害者である、という事実を証言するには、まず当人のこの一連のことがらへそもそも反対の政治的を立場を取る側としてのとてつもない知識と現場の状況と自分そしてその他の労働者の事実を記録し報告する能力が必要であるが、多くは残念ながらかなり無力である

中略

そして、男ってものの性行動への「渇望と罪悪感」の具現化がまたこのトラッフィッキング問題にも、見られますね。フフフ。要するに、売春という職業に自覚的に自分の選択で女の人が従事する、ということに男子は耐えられないのだ。つまり、女子の経済的な独立と自覚的性の資本化をあの口実この口実で阻みたい。トラッフィッキングが事実以上に喧伝されているのもこの辺に問題がある。

耳いたし。"良識"に駆動されるワタクシタチ。でも”性行動への「渇望と罪悪感」の具現化”という解釈は男女関係ないんじゃないかと思ったりする。つまり、”売春という職業に自覚的に自分の選択で女の人が従事する、ということに女子は耐えられない”という意識もあるんではないか。この意味で、慰安婦を論ずるというのは、実に、論者自身の性的価値観までもが関わってくる部分が多分なので実にムズカシイのである。アジア基金にある浅野豊美さんのレポートは、このあたりの性・資本化・戦場、という襞の複雑さを垣間見せる内容だ、と私は思っている。

なお、上記の引用に対応する(と私が感じた)テキストとしてみかけたのは

Loose Women or Lost Women?

The re-emergence of the myth of 'white slavery' in contemporary discourses of 'trafficking in women'

http://www.walnet.org/csis/papers/doezema-loose.html

An essential aspect of the abolitionist campaign against white slavery was to arose public sympathy for the victims. Neither the pre-Victorian 'fallen women' nor the Victorian 'sexual deviant' was an ideal construct to elicit public sympathy. Only be removing all responsibility for her own condition from the prostitute could she be constructed as a victim to appeal to the sympathies of the middle-class reformers, and public support for the end goal of abolition be achieved. The 'white slave' image as used by abolitionists broke down the old separation between 'voluntary' sinful and/or deviant prostitutes and 'involuntary' prostitutes, construing all prostitutes as victims, and removing the justification for regulation.

The 'innocence' of the victim was established through a variety of rhetorical devices: by stressing her youth/virginity; her whiteness; and her unwillingness to be a prostitute. The 'innocence' of the victim also served as a perfect foil for the 'evil trafficker'; simplifying the reality of prostitution and female migration to melodramatic formula of victim and villain (Gibson 1986, Corbin 1990, Grittner 1990).

White Slaveという言葉の歴史・白奴隷とは何か

white slave

1. A girl or woman held against her will, and forced into prostitution.

http://www.allwords.com/word-white%20slave.html

奴隷とはすなわち、本人の意志に反して囲われ、強制的に売春を行わされている少女ないしは女性を指す*1。上の続きにもなるのですが、先日の項目のコメント欄永井先生がWhite slaveryに関する解説を投稿してくれました。目立たないのでこちらに転載。"the Recreation and Amusement Association (RAA), the world's biggest white-slave traffic combine"なんて用法があるのには実にびっくり。1945年の時点で、すでにwhite slaveという言葉は、19世紀の用法(白人の奴隷)からずれていた、ということです。

英語圏とくにアメリカでは、強制売春とslaveという単語の結びつきは、そんなに奇異なものではないはずなので、キンモスさんの「目下のアメリカ人の”奴隷”にたいする語感(奴隷貿易の奴隷)は、慰安婦の実態と差がある」というのは、どう考えてもおかしいですね。

 このグループの掲示板 http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/1 にも書いたことがありますが、アメリカヨーロッパにおいては、white slaveという言葉が19世紀半ばから使われています。だいたいが人身売買や誘拐などで女性を拘束し、売春を強制させること、およびそのようにして売春を強制させられた(主として白人の)女性をさす言葉でした。最初は白人の若い女性のことが社会問題となったので、そのような(白人の)女性のことを(黒人の)奴隷になぞらえてwhite slaveとよんだのです。 

 1910年アメリカでWhite-Slave Traffic Act という名の法律が制定されました。これは売春に従事させる目的で婦女を売買あるいは誘拐、略取することを禁じた法律であり、提案者の案をとって、Mann Actと呼ばれています。その名が示すように、この法律で連邦政府は、white slaveを禁止したわけです。

 さらに、white slaveは国際条約においても使用されています。1910年に締結された「醜業を行わしむる為の婦女売買取締に関する国際条約」の英語名は Convention for the Suppression of the ”White Slave Traffic”でした。「醜業を行わしむる為の婦女売買」=”White Slave Traffic”だったわけです。

 kmiuraさんが紹介されたhizzzさんの「性奴隷の意味」で指摘されているように、

http://d.hatena.ne.jp/hizzz/20070718

婦女売買(women traffic)によって売春を強制させれられる女性の人種がひろがり、しかも社会問題として認識されるようになってくるにつれ、white slaveがsex slaveに変化したのだと思われます。だとすれば、sex slaveは、歴史的にみて、黒人奴隷制ではなくて、「強制売春」と密接に関連した言葉と言わざるをえません。

 ところでwhite slaveの用例をもう一つあげておきましょう。みなさんご存知のRAA、すなわち戦後日本がアメリカ占領軍のために設けた「特殊慰安施設」で、サンケイの古森義久記者が米軍の命令で設置されたと誤報した、例のあれに関するものです。

 古森記者のお仲間の阿比留瑠比氏はそのブログ「国を憂い、われとわが身を甘やかすの記」の2007年05月06日の記事で、このRAAについて言及し、 1997年08月15日の産経新聞東京朝刊1面に掲載された石井英夫記者の「ヨコスカ白昼夢のころ」というコラム記事を引用しています。その石井氏の記事には、次のような一節があります。

「“世界最大の売春トラスト”とシカゴサン東京特派員のマーク・ゲインが呼んだ「特殊慰安施設協会」(RAA)が誕生したのは八月末である。それより早く八月十八日、内務省警保局長から各府県の担当者あてに「進駐軍慰安施設について」と題する秘密指令が発せられていた。」

http://abirur.iza.ne.jp/blog/day/20070506/

 当時日本に特派されていたシカゴサンのマークゲイン記者は、RAAのことを“世界最大の売春トラスト”と呼んだと記されています。

 ところが同じマークゲインの指摘は、別のブログでは、このように記されています。

「〈ニッポン日記〉=昭和二十六年刊=でマーク・ゲインが「世界最大の白奴隷トラスト」と呼んだRAAの銀座本部」

これは、qssoさんの「すさまじきものにして見る人もなきブログ!」の2005-05-31のエントリです。http://tesso.exblog.jp/1979753

 つまり、「世界最大の売春トラスト」と「世界最大の白奴隷トラスト」は等価の関係にあります。では、原文はどうなっているのでしょうか。Mark Gayn Japan Diary, Charles E. Tuttle Company, 1981 では当該部分は、

"the Recreation and Amusement Association (RAA), the world's biggest white-slave traffic combine"

です(p.232)。

 つまり、阿比留氏が“世界最大の売春トラスト”と理解しているものを、マークゲインその人は"the world's biggest white-slave traffic combine"と書いていたわけです。

 サンケイの古森・阿比留両氏によれば、日本軍の慰安所も米軍向けのRAAも、性格的には同じものであったはずです。ですので、RAAが"the world's biggest white-slave traffic combine"ならば、同様に、日本軍慰安所も"white-slave traffic combine"と呼んで何の不思議もないということになるはずです。日本語で書けば、日本軍慰安所は、「白奴隷トラスト」だということになります。

 その古森・阿比留両氏(および彼らと同意見の「日本軍慰安所=戦地公娼制度」論者)が、日本軍慰安所は性奴隷制だという主張に反論するのは、論理的にはまったく一貫しないというべきでしょう。

これに関係する項目

掲示板

http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/1/1

kom’s log(/20070414)へのコメント再掲

http://ianhu.g.hatena.ne.jp/nagaikazu/20070422

*1:なお、この言葉はウェブスターにも掲載されているのだが、同じ定義で1913年付けになっている。

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