第38回国連拷問禁止委員会勧告

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第38回国連拷問禁止委員会勧告

目次

  • 概要
  • 関連リンク
  • オリジナル全文
  • 和訳
    • A. はじめに
    • B. 積極的側面
    • C. 主要な懸念事項及び勧告
    • 拷問の定義
    • 条約の国内適用
    • 時効
    • 司法の独立性
    • ノン・ルフールマンの原則
    • 代用監獄
    • 取調べに関する規則と自白
    • 刑事拘禁施設における拘禁状態
    • 昼夜間独居処遇の使用
    • 死刑
    • 迅速かつ公平な調査、不服申立ての権利
    • 人権教育及び研修
    • 賠償及びリハビリテーション
    • ジェンダーに基づく暴力と人身売買
    • 精神疾患を持つ個人

概要

2007年5月9日~10日に行われた第38回国連拷問禁止委員会による、日本における拷問その他の非人道的取り扱いに関する日本政府の第一回報告に対する審査の最終見解。2007年5月22日に公表。

最終見解は、代用監獄や死刑等の問題とならんで、旧日本軍性奴隷制(いわゆる「慰安婦」)、人身売買、警察による暴力、米軍基地周辺の性暴力などの女性に対する暴力の横行が、日本が1999年に批准した拷問禁止条約の義務のいくつかに反すると明確に指摘しました。委員会は日本政府に対し、ジェンダーに基づく暴力を防止し、これら暴力の根本にある差別をなくすような教育を行うよう勧告しています。

アジア女性資料センターのプレスリリース『ジェンダー暴力に関する第38回国連拷問禁止委員会勧告を歓迎し日本政府に全面的かつ速やかな勧告受け入れを求める』より。

慰安婦に関連しては、特に時効に関する12項で「委員会は、拷問及び虐待とされる行為のための時効は、それら深刻な犯罪についての捜査、起訴及び処罰を妨げうることに懸念を表する。特に、第二次世界大戦中の軍性奴隷、いわゆる「慰安婦」の被害者による提訴が、消滅時効を理由に棄却されたことを遺憾とする」としている。また、23項では「委員会は、第2 次世界大戦中の日本軍性奴隷のサバイバーを含む性暴力被害者に対する救済措置が不充分であり、性暴力及びジェンダーに基づく拷問等禁止条約違反を防ぐために有効な教育的その他の措置がとられていないことに懸念を表明する。「癒しがたい心の傷」によって苦しめられていると、締約国の代表が事実として認めている戦時中の性的虐待のサバイバーは、締約国が公式に事実を否認し続け、真実を隠匿あるいは公開せず、虐待の刑事上の責任者を訴追せず、適切なリハビリテーションを提供しないことによって、継続する苦痛と再トラウマ化を経験している」とし、「性及びジェンダーに基づく暴力の根本原因である差別に取り組む教育を提供し、また刑事免責を防ぐ措置を含め、被害者に対するリハビリテーション措置をとることを勧告」している。

オリジナル全文

→ Committee Against Torture 38th Session, Office of the United Nations High Commissioner for Human Rightsのワード書類へのリンク(英語)

和訳

以下、アジア女性資料センターのサイトにあるPDF、第38回拷問禁止委員会日本報告審査の最終見解の暫定訳より。

【暫定訳】

文書番号CAT/C/JPN/CO/1

2007 年5 月18 日

原文: 英語

拷問禁止委員会

第38 会期

ジュネーブ2007 年4 月30 日~5 月18 日

条約第19 条に基づいて締約国により提出された報告書の審査

拷問禁止委員会の結論及び勧告 日本

1. 委員会は、日本政府による第1 回報告書(文書番号CAT/C/JPN/1)を2007 年5 月9日及び10 日に開催した第767 回及び769 回会議(CAT/C/SR.767 and CAT/C/SR.769)において審査し、2007 年5 月16 日及び18 日に開催した第778 回及び779 回会議(CAT/C/SR.778and CAT/C/SR.779)において、以下の結論及び勧告を採択した。

A. はじめに

2. 委員会は、日本政府の第1 回報告書の提出、また建設的な対話を始めたこの機会を歓迎する。特に、委員会が提示した数多くの口頭質問に対して政府代表団が提供した説明や解説に賞賛をもって注目する。また、委員会は、政府代表団が大きく、それが多様な省庁の代表によって構成され、条約に基づく本会議における義務を重視する姿勢を見せていることについても歓迎する。さらに、報告書審査へのNGO の参加を歓迎する。

3. しかし、委員会は、2000 年7 月に提出期限であった政府報告書が5 年以上も遅れて提出されたことを遺憾とする。また、委員会は、報告書が、締約国内でどのように条約諸規定が実際に適用されているかに関する詳細情報が不足している限りにおいて、第1 回報告書準備のための委員会のガイドラインに十分に沿うものではないことに注目する。第1 回報告書は、条約が保障する人権の実施について具体的事例や統計を用いた分析によらず、法規定に限られたものとなることが多いのである。

B. 積極的側面

4. 締約国による大部分の国際人権条約の批准。

5. 委員会は、以下の採択も歓迎する。

    • a) 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成16 年6 月2 日法律第73 号)
    • b) 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律。これは、(受刑者について「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」として2005 年5 月24 日に成立し施行され、2006年6 月2 日に改正された。

6. 委員会は、刑事施設の透明性を高める目的及び、暴行の再発を防止するために、刑事施設視察委員会や刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会のような新しいメカニズムを設置したことに注目する。加えて、委員会は、2007 年6 月までに、留置施設視察委員会を設置することが発表されたことを歓迎する。

7. 委員会は、現在、行動科学及び心理学、並びに人権基準を含むという、矯正局による刑事拘禁施設の職員に対する研修カリキュラムとその実施にかかわる活動を歓迎する。

8. 委員会は、また締約国が人身売買と闘うためにとった行動,特に,2004 年12 月の「人身売買と闘う国内行動計画(the National Plan of Action to Combat Trafficking in Persons)」の採択,刑法並びに出入国管理及び難民認定法の関連規定の改正を歓迎する。

9. 委員会は、報告書準備の枠組みのなかで、締約国が行った市民社会との協議を歓迎する。

C. 主要な懸念事項及び勧告

拷問の定義

10. 条約1 条が意味するところの「拷問」として説明されうるあらゆる行為は、日本国の刑法等によって犯罪として処罰可能であるという締約国の主張があったが、委員会は、条約1 条に規定されている拷問の定義が、締約国の刑法に未だ含まれていないことに憂慮をもって注目する。特に、委員会は、条約の定義による「精神的拷問」は、刑法195 条及び196 条において明確に定義づけられていないことについて、また脅迫など関連する行為に対する刑罰が不適切であることについて、懸念を表する。さらに、委員会は、日本の法制度が、例えば自衛隊員や入管職員など、あらゆる種類の公務員、公的資格で行動する個人、又は、公務員若しくは公的資格で行動するその他の者の扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行動した個人をカバーしていないことに懸念を表する。

締約国は、適当な刑罰を科する特別な犯罪として拷問を性格づけるあらゆる構成要素を含めることによって、条約1 条に包含される拷問の定義を国内法に含めるべきである。

条約の国内適用

11. 委員会は,条約の直接適用に関する情報,特に,国内裁判所による適用例,並びに戦時における条約の適用についての情報の不足について遺憾とする。

締約国は,裁判所による条約の直接適用を確保するためにとられた措置及びその具体的事例に関する情報を委員会に提供すべきである。締約国は,戦時の条約適用に関する情報を提供すべきである。

時効

12. 委員会は、拷問及び虐待とされる行為が時効の対象とされていることに憂慮をもって注目する。委員会は、拷問及び虐待とされる行為のための時効は、それら深刻な犯罪についての捜査、起訴及び処罰を妨げうることに懸念を表する。特に、第二次世界大戦中の軍性奴隷、いわゆる「慰安婦」の被害者による提訴が、消滅時効を理由に棄却されたことを遺憾とする。

締約国は、拷問行為の未遂、共謀及び加担を含む拷問及び虐待とされる行為が、時効にかかることなく捜査が行われ、起訴され、また処罰がなされるように、時効に関する規則及び法規定を見直し、条約上の義務に十分に従ったものとなるようにすべきである。

司法の独立性

13. 委員会は、司法の独立の程度が不十分であること、特に、必要的な保証が欠如している裁判官の任期に関して懸念を表する。

締約国は、司法の独立性を強化し、特に裁判官の任期の保証を確保するために、あらゆる必要な措置をとるべきである。

ノン・ルフールマンの原則

14. 委員会は、締約国の国内法及び運用において、一部の条項が条約第3 条に適合していないことに懸念し、特に次の点について懸念を有する。

    • a) 2006 年出入国管理及び難民認定法は、拷問を受ける可能性がある国ぐにへの送還を明確に禁止せず;加えて、再審査機関は条約第3 条の適用を制度的に調査せず;
    • b) 難民認定の該当性を再審査する独立した機関の欠如;
    • c) 多数の暴行の疑い、送還時の拘束具の違法使用、虐待、性的いやがらせ、適切な医療へのアクセス欠如といった上陸防止施設及び入国管理局の収容センターでの処遇。特にこれまでに1 件のみが入国管理収容センターでの虐待として認められているにすぎないことに委員会は懸念を有する。
    • d) 入国管理収容センター及び上陸防止施設を独立して監視するメカニズムの欠如、特に被収容者が入国管理局職員による暴行容疑について申立てできる独立した機関の欠如。また、第三者である難民参与員の任命基準が公表されていないことにも委員会は懸念を有する;
    • e) 法務省は難民認定申請者に対し、異議申立ての際の法的代理人を選任させず、非正規滞在者に対する政府による法的援助が事実上は限定的である事実を踏まえ、入国管理局職員による裁定を再審査する独立した機関の欠如。
    • f) 全ての庇護希望者の司法審査へのアクセス保障の不十分性と行政手続終了直後に送還を執行した疑い。
    • g) 難民申請却下後から送還までの庇護希望者の無期限拘束、特に無期限及び長期の収容ケースの報告。
    • h) 2006 年入管法改正の際に導入された仮滞在制度の厳正性及び限定的な効果。

締約国は、移民の収容と送還に関連する全ての措置と運用は、条約第3 条に十分に適合するように保障するべきである。特に締約国は、送還された場合、拷問の対象となる危険にさらされると信ずる十分な根拠がある国ぐにへの送還を明確に禁止し、難民該当性を再審査する独立した機関を設置すべきである。締約国は難民申請及び送還手続きにおける適正手続き(due process)を保障するべきである。締約国は入国管理収容施設における処遇に関する不服申立てを審査する独立した機関を遅滞なく設置すべきである。締約国は、特に弱い立場にある人々が送還を待つ間の収容期間に上限を設置し、書面による送還命令発付以後の収容の必要性に関連する情報を公開すべきである。

代用監獄

15. 委員会は、被逮捕者が裁判所に引致された後ですら、起訴に至るまで、長期間勾留するために、代用監獄が広くかつ組織的に利用されていることに深刻な懸念を有する。これは、被拘禁者の勾留及び取調べに対する手続的保障が不十分であることとあいまって、被拘禁者の権利に対する侵害の危険性を高めるものであり、事実上、無罪推定の原則、黙秘権及び防御権を尊重しないこととなり得るものである。特に、委員会は以下の点について深刻な懸念を有する。

    • a) 捜査期間中、起訴にいたるまで、とりわけ捜査の中でも取調べの局面において、拘置所に代えて警察の施設に拘禁されている者の数が異常に多いこと
    • b) 捜査と拘禁の機能が不十分にしか分離されておらず、そのために捜査官は被拘禁者の護送業務に従事することがあり、終了後には、それらの被拘禁者の捜査を担当し得ること
    • c) 警察留置場は長期間の勾留のための使用には適しておらず、警察で拘禁された者に対する適切かつ迅速な医療が欠如していること、
    • d) 警察留置場における未決拘禁期間が、一件につき起訴までに23日間にも及ぶこと
    • e) 裁判所による勾留状の発付率の異常な高さにみられるように、警察留置場における未決拘禁に対する裁判所による効果的な司法的コントロール及び審査が欠如していること
    • f) 起訴前の保釈制度が存在しないこと
    • g) 被疑罪名と関係なく、すべての被疑者に対する起訴前の国選弁護制度が存在せず、現状では重大事件に限られていること
    • h) 未決拘禁中の被拘禁者の弁護人へのアクセスが制限され、とりわけ、検察官が被疑者と弁護人との接見について特定の日時を指定する恣意的権限をもち、取調べ中における弁護人の不在をもたらしていること
    • i) 弁護人は、警察保有記録のうち、すべての関連資料に対するアクセスが制限されており、とりわけ、検察官が、起訴時点においていかなる証拠を開示すべきか決定する権限を有していること
    • j) 警察留置場に収容された被拘禁者にとって利用可能な、独立かつ効果的な査察と不服申立ての仕組みが欠如していること
    • k) 刑事施設では廃止されたのと対照的に、警察拘禁施設において、防声具が使用されていること

締約国は、未決拘禁が国際的な最低基準に合致するものとなるよう、速やかに効果的な措置をとるべきである。とりわけ、締約国は、未決拘禁期間中の警察留置場の使用を制限するべく、刑事被収容者処遇法を改正すべきである。優先事項として、締約国は、

    • a) 留置担当官を捜査から排除し、また捜査担当官を被収容者の拘禁に関連する業務から排除し、捜査と拘禁(護送手続を含む)の機能の完全な分離を確実にするため、法律を改正し、
    • b) 国際的な最低基準に適合するよう、被拘禁者を警察において拘禁できる最長期間を制限し、
    • c) 警察拘禁中の適切な医療への速やかなアクセスを確実にすると同時に、法的援助が逮捕時点からすべての被拘禁者に利用可能なものとされ、弁護人が取調べに立ち会い、防御の準備のため起訴後は警察記録中のあらゆる関連資料にアクセスできることを確実にし、
    • d) 都道府県警察が、2007 年6 月に設立される予定の留置施設視察委員会の委員には、弁護士会の推薦する弁護士を組織的に含めることを確実にするなどの手段により、警察拘禁に対する外部査察の独立性を保障し、
    • e) 警察留置場の被留置者からの不服申立てを審査するため、公安委員会から独立した効果的不服申立制度を確立し、
    • f) 公判前段階における拘禁の代替措置の採用について考慮し、
    • g) 警察留置場における防声具の使用を廃止するべきである。

取調べに関する規則と自白

16. 委員会は、とりわけ、未決拘禁に対する効果的な司法的統制の欠如と、無罪判決に対して、有罪判決の数が非常に極端に多いことに照らし、刑事裁判における自白に基づいた有罪の数の多さに深刻な懸念を有する。委員会は、警察拘禁中の被拘禁者に対する適切な取調べの実施を裏付ける手段がないこと、とりわけ取調べ持続時間に対する厳格な制限がなく、すべての取調べにおいて弁護人の立会いが必要的とされていないことに懸念を有する。加えて、委員会は、国内法のもとで、条約第15 条に違反して、条約に適合しない取調べの結果なされた任意性のある自白が裁判所において許容されうることに懸念を有する。

締約国は、警察拘禁ないし代用監獄における被拘禁者の取調べが、全取調べの電子的記録及びビデオ録画、取調べ中の弁護人へのアクセス及び弁護人の取調べ立会いといった方法により体系的に監視され、かつ、記録は刑事裁判において利用可能となることを確実にすべきである。加えて、締約国は、取調べ時間について、違反した場合の適切な制裁を含む厳格な規則を速やかに採用すべきである。締約国は、条約第15 条に完全に合致するよう、刑事訴訟法を改正すべきである。締約国は、委員会に対し、強制、拷問もしくは脅迫、あるいは長期の抑留もしくは拘禁の後になされ、証拠として許容されなかった自白の数に関する情報を提供すべきである。

刑事拘禁施設における拘禁状態

17. 委員会は、過剰収容を含む刑事拘禁施設の一般的な拘禁状態に懸念を有する。革手錠の廃止を歓迎する一方で、「第二種手錠」が、懲罰で、不適切に用いられている申立があることについても、懸念をもって留意する。委員会は、刑事施設制度のなかに独立した医療スタッフが不足していること、被収容者に対する医療的援助が著しく遅滞していることについて懸念を有する。

締約国は、拘禁場所における状態の向上のために、また、国際的な最低基準に従って、実b効的措置をとるべきである。とくに現在の過剰収容について措置をとるべきである。締約国は、拘束具について厳格な監視を確保し、とくにそれが懲罰として用いられることを防ぐために措置をとるべきである。さらに、締約国は、適切で、独立した、かつ迅速な医療的援助がすべての被収容者にあらゆる時に施されるよう確保すべきである。締約国は、医療設備やスタッフを厚生労働省のもとにおくことを検討すべきである。

昼夜間独居処遇の使用

18. 委員会は、2005年に成立した受刑者処遇法が昼夜間独居処遇の使用を制限する規定を設けているにもかかわらず、長期にわたる昼夜間独居処遇が継続して用いられているとの訴えについて深い懸念を有する。委員会は、特に次の点について懸念を有する。

    • a) 3ヶ月後の更新に制限がないというように、事実上、昼夜間独居処遇の期間に制限がないこと。
    • b) 10年を超えて独居とされている被拘禁者の人数。一つの例では42年を超えている。
    • c) 昼夜間独居処遇が懲罰として使用されているとの訴えがあること。
    • d) 昼夜間独居処遇とされている被収容者に対して、精神障害について不適切なスクリーニングしかなされていないこと。
    • e) 昼夜間独居処遇を課す決定に対して、通常の処遇に戻すための効果的な手続きの不足。
    • f) 昼夜間独居処遇の必要性を決定する際の基準の欠如。

締約国は、国際的な最低基準に従って、昼夜間独居処遇が限定された期間の例外的な措置となるように現在の法制度を改正するべきである。締約国は長期にわたる昼夜間独居処遇を受けている全ての事例について、当該拘禁が条約に反すると考えられる場合には、これらの者を(この状態から)解放するという観点から、心理学的に、及び、精神医学な評価に基づいて、組織的な(systematically)調査を行うことを検討するべきである。

死刑

19. 最近の立法が死刑確定者の面会及び通信の権利を拡大したことに注目しつつも、委員会は、死刑を言い渡された人々に関する国内法における多くの条項が、拷問あるいは虐待に相当し得るものであることに深い懸念を有する。とりわけ、

    • a) 確定判決の言渡し後、独居拘禁が原則とされ、死刑確定後の長さをみれば、いくつかの事例では30 年を超えていること、
    • b) 死刑確定者とその家族のプライバシー尊重のためと主張されている、不必要な秘密主義と処刑の時期に関する恣意性。とりわけ委員会は、死刑確定者が自らの死刑執行が予定されている時刻のわずか数時間前に執行の告知を受けるため、死刑確定者とその家族が、常に処刑の日にちが不明であることによる精神的緊張を強いられることを遺憾とする。

締約国は、死刑確定者の拘禁状態が国際的な最低基準に合致するものとなるよう、改善のためのあらゆる必要な手段をとるべきである。

20. 委員会は、死刑確定者の法的保障措置の享受に対して課された制限、とりわけ以下の点に関して深刻な懸念を有する。

    • a) 再審請求中であっても、弁護人と秘密接見をすることが不可能である点を含めて、弁護人との秘密交通に関して死刑確定者に課せられた制限、秘密交通の代替手段の欠如、及び確定判決後の国選弁護人へのアクセスの欠如
    • b) 死刑事件における必要的上訴制度の欠如
    • c) 再審手続ないし恩赦の申請が刑の執行停止事由ではないという事実
    • d) 精神障害の可能性のある死刑確定者を識別するための審査の仕組みが存在しないこと
    • e) 過去30 年間において死刑が減刑された事例が存在しないという事実

締約国は、死刑の執行をすみやかに停止し、かつ、死刑を減刑するための措置を考慮すべきであり、恩赦措置の可能性を含む手続的な改革を行うべきである。すべての死刑事件において、上訴権は必要的とされるべきである。さらに、締約国は、死刑の実施が遅延した場合には死刑を減刑し得ることを確実に法律で規定すべきである。締約国は、確実に、すべての死刑確定者が、条約に規定された保護を与えられるようにすべきである。

迅速かつ公平な調査、不服申立ての権利

20-2. 委員会は、以下の事項に懸念を表する。

    • a) 警察留置場における実効的な不服申立制度の不足。刑事被収容者処遇法が、そうした責務を有する独立機関を創設しなかったことは残念である。委員会は、2007 年6 月に設置される留置施設視察委員会に関する情報が不足していることに留意する。
    • b) 刑事施設視察委員会に、拷問等に関する調査について充分な権限が不足していること。
    • c) 法務省の職員が事務局を務めていることによって、刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会の独立性が不十分であること、また、被収容者及び職員にインタビューできず、またあらゆる関連文書に直接アクセスできないことから直接的に事案を調査する権限が限られていること。
    • d) 不服申立てをする権利に法的制限があること、また不服申立てをしようとする際に弁護士による援助を受けることが不可能であること。
    • e) 不服申立てを行ったことによって、また、賠償請求にかかわる時効によって却下された訴訟を行ったことによる不利益的影響を受けたとの報告があること。
    • f) 受理した申立数、着手されまた完了された調査の数、さらにその結果の数について情報の不足、これには侵害者の数とその者が受けた判決に関する情報も含む。

締約国は、警察留置場または刑事拘禁施設の双方における被収容者からの拷問等の申立てすべてについて、迅速、公正で、かつ実効的な調査を行う独立メカニズムを設置すべきである。締約国は、被収容者が不服申立ての権利を充分に行使できるように確保するために、拷問等行為についての時効の撤廃、不服申立てをするための法的援助の利用の確保、証人に対する脅迫からの保護措置の設置、及び賠償請求の権利を制限するあらゆる規定の見直しなどを含む、あらゆる必要な措置をとるべきである。締約国は、法執行官によって行われたことが疑われる拷問等に関する申立てについて、犯罪種別、エスニシティ、年齢、性別ごとの詳細な統計データを、また、関連する調査、起訴、刑罰、または懲戒処分についての詳細な統計データを提供すべきである。

人権教育及び研修

21. 委員会は、条約に違反する尋問手続を記した取調官のための研修マニュアルが存在するとの報告に注目する。さらに、委員会は、人権教育、特に女性及び子どもの特別な人権についての教育が、組織的には、刑事拘禁施設の職員に対して提供されているだけで、警察留置場の職員、取調官、裁判官及び入管収容施設の保安担当職員に対する教育カリキュラムには十分に含まれていないことに懸念を表する。

締約国は、法執行官、特に取調官に対する教育カリキュラムに関するあらゆる素材が公にされるよう確保すべきである。さらに、裁判官や入管職員を含むあらゆる種類の法執行官は、特に、拷問、子ども及び女性の権利に焦点を当てた、自身の職務における人権の実現について定期的に訓練を受けるべきである。

賠償及びリハビリテーション

22. 委員会は、人権侵害の被害者が救済及び十分な賠償を得るにあたって直面している困難があるとの報告に懸念を表する。委員会は、また、時効や移民に対する相互主義の原則など賠償の権利に対する制限についても懸念を表する。委員会は、拷問又は虐待の被害者が求め、また得ることができた賠償に関する情報が不足していることについて遺憾を有する。

締約国は、拷問又は虐待のすべての被害者が、賠償及びリハビリテーションを含む救済の権利を十分に行使することができるよう確保するために、あらゆる必要な措置をとるべきである。締約国は、国内においてリハビリテーション・サービスを設置するための措置をとるべきである。締約国は、委員会に対し、被害者に対して提供されたあらゆる賠償又はリハビリテーションに関する情報を提供すべきである。

23. 委員会は、第2 次世界大戦中の日本軍性奴隷のサバイバーを含む性暴力被害者に対する救済措置が不充分であり、性暴力及びジェンダーに基づく拷問等禁止条約違反を防ぐために有効な教育的その他の措置がとられていないことに懸念を表明する。「癒しがたい心の傷」によって苦しめられていると、締約国の代表が事実として認めている戦時中の性的虐待のサバイバーは、締約国が公式に事実を否認し続け、真実を隠匿あるいは公開せず、虐待の刑事上の責任者を訴追せず、適切なリハビリテーションを提供しないことによって、継続する苦痛と再トラウマ化を経験している。

委員会は、教育(第10 条)と救済措置(第14 条)がともに、この条約において締約国に課されている義務のさらなる違反行為を防ぐための手段であると考える。締約国によって公式に否認が繰り返され、訴追されず、適切なリハビリテーションが提供されていないことはすべて、拷問等禁止条約において締約国に課されている、教育及びリハビリテーション措置を通じて防止することも含めて、拷問と虐待を防止するという義務に違反することにつながっている。委員会は締約国に、性及びジェンダーに基づく暴力の根本原因である差別に取り組む教育を提供し、また刑事免責を防ぐ措置を含め、被害者に対するリハビリテーション措置をとることを勧告する。

ジェンダーに基づく暴力と人身売買

24. 委員会は、法執行機関の職員による性暴力を含む、ジェンダーに基づく暴力及び拘留中の女性と子どもに対する虐待についての申し立てが相次いでいることに懸念を表明する。委員会はまた、締約国のレイプに関する法規の範囲が、男女間の生殖器による性交渉のみに適用され、男性被害者に対するレイプ等、その他の形態による性的虐待を除外する限定的なものであることに懸念を表明する。加えて委員会は、締約国において、国境を超えた人身売買が、政府によって発行される興行ビザの目的外使用によって促進され、そのうえ確認された被害者への支援措置が不適切なままであるために、人身売買の被害者が不法移住者として取り扱われ、救済措置をとられることなく国外に強制送還されるなど、依然として深刻な問題となっていることに懸念を表明する。委員会はまた、駐留外国軍を含む軍関係者による女性及び少女に対する暴力を防止しまた加害者を訴追するための効果的な施策が不足していることに懸念を表明する。

締約国は、ドメスティック・バイオレンス及びジェンダーに基づく暴力を含む、性暴力及び女性に対する暴力を根絶するために防止措置を導入し、また責任者の告訴を前提として、拷問あるいは虐待に関するあらゆる申し立てについて早急かつ公平な調査を実施すべきである。委員会は締約国に対し、興行ビザの利用が人身売買を促進しないよう利用を制限すること、十分に資源を配分すること、関連する刑法の適用を積極的に追求することなど、人身売買対策の強化を要請する。また締約国が、法執行官及び司法関係者が被害者の権利とニーズに敏感になることを確保するための研修を実施すること、警察に専門部署を設置して被害者のためのよりよい保護と適切なケア、とりわけ安全な住居、シェルター、心理社会的な支援へのアクセスを提供することを推奨する。締約国は、駐留外国軍によるものも含め、あらゆる被害者が司法裁判所に救済措置を申し立てできるよう措置をとらなければならない。

精神疾患を持つ個人

25. 委員会は民間病院における民間の指定精神科医が精神疾患を持つ個人に対して拘禁命令を発することができるということ、拘禁命令、民間精神病院の管理経営、患者からの拷問又は虐待の行為に関する不服への不十分な司法的コントロールに懸念を表する。

締約国は官営及び民営の精神病院における拘禁手続について、実効的かつ一貫した司法的コントロールを確保するためあらゆる必要な措置を採るべきである。

26. 委員会は、締約国に対し、条約22 条に基づく受諾宣言を検討し、よって、委員会が通報を受ける資格を有することを認め、通報を検討することができるようにすることを勧奨し、また同時に条約の選択議定書の批准も検討するよう奨励する。

27. 委員会は、締約国が国際刑事裁判所のローマ規程の加盟国となることを検討するよう奨励する。

28. 締約国は委員会に提出された報告書、委員会による結論及び勧告が、適切な言語で、公式のウェブサイトや報道機関、NGO を通じて、広く公表することを奨励されている。

29. 委員会は,締約国に対し,国際人権条約機関によって最近,勧告された「報告に関する調和的ガイドライン内の共通重要文書(the Common Core Document in the Harmonized Guidelines on Reporting)」(HRI/MC/2006/3 and Corr.1)の要求に沿って重要な文書を提出することを勧める。

30. 委員会は、締約国に対し、本文書パラグラフ14,15,16 及び24 に含まれる委員会による勧告に対する返答に関して1 年以内に情報を提供することを求める。

31. 締約国には、2011 年6 月30 日までに第2 回報告書を提出することが勧められる。