河野談話
目次
■ 概要
1993年8月の河野洋平(当時官房長官)による声明。慰安婦システムが旧日本軍の直接・間接の関与によって運営されたこととその強制性を認め、被害者にたいする謝罪をした。またその責任を取るために、政府が行動を起こすことを表明した。
日本国内では右派論壇からの河野談話に対する批判がおこった。秦郁彦を中心に、慰安婦の就業を強制したのは民間の業者である、という歴史解釈に基づき日本軍の関与を否定しようとするものであった。同時にその強制性を分類し、”広義の強制性”(詐欺などを含む徴用)はあったが”狭義の強制性”(強制連行)はなかった、とした。こうした新解釈は漫画家の小林よしのりによって紹介され一般に流布した。一連の歴史修正主義的な流れの強まりと、2006年度をもってアジア女性基金が閉鎖されることを鑑み、アメリカの議会では、慰安婦問題に対する日本政府の姿勢を再確認する意味もこめて、決議案121号が上程された(アメリカ下院決議案121号(2007年)参照)。このアメリカ側の動きに対して、2007年3月、安部首相(当時)は慰安婦就業の狭義の強制性はなかったと国会で発言した。また麻生外務大臣は(当時)は、強制性の証拠はない、と発言した。日本外の各国では歴史修正主義者のみならず日本政府が河野談話を公式に否定しようとしているのではないかという見方をいっそう強める結果となった。
--> 参考1
■ オリジナル (和文)
慰安婦関係調査結果発表に関する
河野内閣官房長官談話
平成5年8月4日
いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。
■ 英文 (外務省発表)
Statement by the Chief Cabinet Secretary Yohei Kono
on the result of the study on the issue of "comfort women"
August 4, 1993
The Government of Japan has been conducting a study on the issue of wartime "comfort women" since December 1991. I wish to announce the findings as a result of that study.
As a result of the study which indicates that comfort stations were operated in extensive areas for long periods, it is apparent that there existed a great number of comfort women. Comfort stations were operated in response to the request of the military authorities of the day. The then Japanese military was, directly or indirectly, involved in the establishment and management of the comfort stations and the transfer of comfort women. The recruitment of the comfort women was conducted mainly by private recruiters who acted in response to the request of the military. The Government study has revealed that in many cases they were recruited against their own will, through coaxing coercion, etc., and that, at times, administrative/military personnel directly took part in the recruitments. They lived in misery at comfort stations under a coercive atmosphere.
As to the origin of those comfort women who were transferred to the war areas, excluding those from Japan, those from the Korean Peninsula accounted for a large part. The Korean Peninsula was under Japanese rule in those days, and their recruitment, transfer, control, etc., were conducted generally against their will, through coaxing, coercion, etc.
Undeniably, this was an act, with the involvement of the military authorities of the day, that severely injured the honor and dignity of many women. The Government of Japan would like to take this opportunity once again to extend its sincere apologies and remorse to all those, irrespective of place of origin, who suffered immeasurable pain and incurable physical and psychological wounds as comfort women.
It is incumbent upon us, the Government of Japan, to continue to consider seriously, while listening to the views of learned circles, how best we can express this sentiment.
We shall face squarely the historical facts as described above instead of evading them, and take them to heart as lessons of history. We hereby reiterated our firm determination never to repeat the same mistake by forever engraving such issues in our memories through the study and teaching of history.
As actions have been brought to court in Japan and interests have been shown in this issue outside Japan, the Government of Japan shall continue to pay full attention to this matter, including private researched related thereto.
■ 英文リンク
Statement by the Chief Cabinet Secretary Yohei Kono
on the result of the study on the issue of "comfort women"
■ 参考1 河野談話”強制連行”神話
平成9年1997年1月30日参議院予算委員会で、あの片山虎之助議員がこう発言している。
「そこで、文部大臣が今言われた平成五年八月四日の外政審議室の調査、それに基づく官房長官の談話がこれまた不正確なんですよ、不正確。軍が関与していると。関与はしていますよ。関与にもいい関与、悪い関与、積極的な関与、消極的な関与があるんだから。それは兵士を守るために消極的にはいい関与をしたんですよ。だから、それは私は否定しません、否定しない。それじゃ、強制連行や強制募集、そういうことの事実が確認できたかどうかなんです。ところが、あの調査報告も官房長官談話もかなりあいまいなんです。」
河野談話には、そもそも「強制連行」「強制募集」を示す文言はない。そのため、政府委員はこう答える。
「○政府委員(平林博君) お答えを申し上げます。
政府といたしましては、二度にわたりまして調査をいたしました。一部資料、一部証言ということでございますが、先生の今御指摘の強制性の問題でございますが、政府が調査した限りの文書の中には軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような記述は見出せませんでした。
ただ、総合的に判断した結果、一定の強制性があるということで先ほど御指摘のような官房長官の談話の表現になったと、そういうことでございます。」
ここで片山虎之助くんは得意になって次の発言をする。
「○片山虎之助君 今の審議室長の話は、資料と証言を集めた、資料には強制性を示すようなものはなかったと。ということは、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、今答弁したんだから。
そこで、それじゃ証言ということになる。その証言はどういう人から集めましたか。」
軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような記述がなかったというのが、資料に強制性を示すものはない、にすり替わっている。政府委員もさすがにこれは見過ごせないわけでこう答えている。
「○政府委員(平林博君) その前に、強制性の問題でございますが、今御答弁申し上げましたのは、強制募集を直接示すような記述は見出せなかったと。ただ、もう少し敷衍して申し上げれば、いわゆる従軍慰安婦の方々の日常の生活等におきましては強制性が見られるということで先はどのような官房長官の談話になったということでございます。」
このやり取りが「従軍慰安婦の強制募集・強制連行」の最初ではないかと思うのだが(民間ではどうかわかないが)、もともと河野談話に書いてもいない「従軍慰安婦の強制募集・強制連行」に対して「そんな証拠はない!」と追求する方法が印象操作に有効であることをこのやり取りが示したと言えると思う。
■ 参考2 テッサ・モーリス・鈴木によるエッセイ
"Japan’s ‘Comfort Women’: It's time for the truth (in the ordinary, everyday sense of the word)"
@Japan Focus
http://japanfocus.org/products/details/2373
While the US Congress has been debating its resolution on the "Comfort Women" issue, a group of conservative Japanese parliamentarians - members of the ruling Liberal Democratic Party - have been lobbying to have the government publicly disavow Kono's apology. Their argument (closely echoed in Abe's comments) is that there is no need for such an apology since comfort women were "forcibly taken away against their will by commercial agents, but they were not forcibly taken away by the military or officials." [14]
This denial goes hand-in-hand with an insistence that those demanding justice for the "comfort women" are just a bunch of biased and ill-informed "Japan-bashers". An article by journalist Komori Yoshihisa in the conservative Sankei newspaper, for example, reports that the US Congress resolution is "based on a complaint which presumes that all the comfort women were directly conscripted by the Japanese army, and that the statements by Kono and Murayama were not clear apologies." [15]
Komori does not appear to have read the resolution with much attention. House Resolution 121 (whose main sponsor is Michael Honda, an American of Japanese ancestry who experienced incarceration in a US wartime internment camp) certainly refers to the "Imperial Army's Coercion of young women into sexual slavery", but nowhere does it suggest that all the recruitment was carried out by the armed forces. On the contrary, its wording carefully describes the Japanese government as having "officially commissioned the acquisition of young women for the sole purpose of sexual servitude to its Imperial Armed Forces". (emphasis added) The resolution also goes on to commend "those Japanese officials and private citizens whose hard work and compassion resulted in the establishment in 1995 of Japan's private Asian Women's Fund", and to refer to the 1993 Kono apology. However, it expresses alarm at moves to rescind the apology, and at the closing down of the Asian Women's Fund, and in that context calls on the Japanese government to renew its apology and disseminate information about the history of the "comfort women". In essence, then, the Resolution demands that the Japanese government fulfil Kono's promises. [16]
■ 参考4 麻生内閣総理大臣の認識
第170回国会 参議院予算委員会 第4号 平成二十年十月十五日(水曜日)
参議院第1委員会室
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/170/0014/17010150014004a.html
○福島みずほ君 はい。地方切捨ての三位ばらばら改悪で、結局、自治体病院がなぜ今、休止、閉鎖、民営化か。結局、そのときの原因なんですよ。それをちゃんと反省すべきだし、小泉構造改革は結果において地方を切り捨てたと思います。
次に、女性の政策の中で、総理、慰安婦の問題に関する河野官房長官談話、日本軍の強制性を認めた談話を踏襲されますか。
○内閣総理大臣(麻生太郎君) 今御質問のありました慰安婦問題につきましては、政府の基本的立場というものは現在も平成五年八月四日の河野官房長官談話を踏襲するというものであります。
* はてなダイアリーキーワード:河野談話
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- 2008/08/09 01:48:11 オランダ『慰安婦』問題非難決議
- 2008/08/09 01:48:11 カナダの『慰安婦』謝罪・賠償決議
- 2008/08/09 01:48:08 米議会調査局(CRS)報告書(2007年4月)
- 2008/08/09 01:48:06 従軍慰安婦
- 2008/11/11 02:51:17 河野談話
- 2010-09-25 18:44:32 Stiffmuscleの日記 - 強制連行はなかった!と未だに言い張る元総理(怒)
- 2009-07-26 22:56:02 Stiffmuscleの日記 - 論破より先にすることがある 1
- 2009-07-22 18:02:47 Stiffmuscleの日記 - 日本政府はどうしようもない
- 2008-10-16 21:39:17 Stiffmuscleの日記 - 「慰安婦」問題を解決する気ゼロの日本政府
- 2008-09-21 19:27:44 Stiffmuscleの日記 - 河野洋平氏の言葉の重み
- 2008-07-19 19:53:07 Stiffmuscleの日記 - 『狭義・広義の「強制」』:藤岡信勝のご高説
- 2008-07-03 00:28:48 Stiffmuscleの日記 - 『強制連行』について整理する
- 2008-05-16 21:07:32 Stiffmuscleの日記 - 国連で官僚答弁しても無駄です
- 2008-03-15 23:12:56 Stiffmuscleの日記 - 国際人権規約
- 2007-12-08 16:58:06 Stiffmuscleの日記 - 返事来るといいですね(棒)
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