強制労働に関する条約(第29号)

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強制労働に関する条約(第29号)

   強制労働に関するILO条約第29号、強制労働条約第29号( 1930年)とも呼ばれる。国際労働機関ILO)第14回総会で1930年6月28日採択。条約発効日は1932年5月1日。現在も通用する最新の条約で、基本条約の1つ。日本は1932年11月21日に批准。

概要

ILO駐日事務所のサイトより

   すべての強制労働の使用を、できる限り短い期間のうちに廃止することを目的とした条約。この条約で、強制労働というのは、処罰の脅威によって強制され、また、自らが任意に申し出たものでないすべての労働のことである。もっとも、純然たる軍事的性質の作業に対し強制兵役法によって強制される労務、国民の通常の市民的義務を構成する労働、裁判所判決の結果として強要される労務、緊急の場合、例えば戦争、火災地震、猛烈な流行病その他のような災害またはそのおそれのある場合に強要される労務、軽易な地域社会の労務であって通常の市民的義務と認められる労務などは包含されない。強制労働が完全に廃止されるまでの経過期間中において、例外の措置として使用されるときには、この条約に決めた条件に従わなくてはならない。

   この条約に関連して、1930年に間接の労働強制に関する勧告(第35号)と強制労働の規律に関する勧告(第36号)が採択されている。

   この条約1930年という時代状況を反映し、植民地における労働形態を念頭に置いている条文がほとんどで、第1条の一部、第2条、第25条を除く他の条文は、最近の数十年間監視機構のコメントでもほとんど触れられたことがない。

 1957年の強制労働廃止条約(第105号)はこの条約を補強・補完する条約

条約の和文

ILO駐日事務所のサイトより

強制労働ニ関スル条約(第29号)

(日本は1932年11月21日批准)

 国際労働機関ノ総会ハ

 国際労働事務局ノ理事会ニ依リジュネーブニ招集セラレ千九百三十年六月十日ヲ以テ其ノ第十四回会議ヲ開催シ

 右会議ノ会議事項ノ第一項目ノ一部タル強制労働ニ関スル提案ノ採択ヲ決議シ且

 該提案ハ国際条約ノ形式ニ依ルベキモノナルコトヲ決定シ

 国際労働機関ノ締盟国ニ依リ批准セラルルガ為国際労働機関憲章ノ規定ニ従ヒ千九百三十年六月二十八日千九百三十年ノ強制労働条約ト称セラルベキ左ノ条約ヲ採択ス

第 一 条

1 本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ能フ限リ最短キ期間内ニ一切ノ形式ニ於ケル強制労働ノ使用ヲ廃止スルコトヲ約ス

2 右完全ナル廃止ノ目的ヲ以テ強制労働ハ経過期間中公ノ目的ノ為ニノミ且例外ノ措置トシテ使用セラルコトヲ得尤モ以下ニ定メラルル条件及保障ニ従フモノトス

3 本条約ノ効力ノ発生ヨリ五年ノ期間満了シ且国際労働事務局ノ理事会ガ後ニ掲ゲラルル第三十一条ニ定メラルル報告ヲ作成スルニ当リ右理事会ハ更ニ経過期間ヲ設クルコトナクシテ一切ノ形式ニ於ケル強制労働ヲ廃止スルコトヲ得ルヤ否ヤ及本問題ヲ総会ノ会議事項ニ掲グルコトノ望マシキヤ否ヤヲ審議スベシ

第 二 条

1 本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ或者ガ処罰ノ脅威ノ下ニ強要セラレ且右ノ者ガ自ラ任意ニ申出デタルニ非ザル一切ノ労務ヲ謂フ

2 尤モ本条約ニ於テ「強制労働」ト称スルハ左記ヲ包含セザルベシ

(a) 純然タル軍事的性質ノ作業ニ対シ強制兵役法ニ依リ強要セラルル労務

(b) 完全ナル自治国ノ国民ノ通常ノ公民義務ヲ構成スル労務

(c) 裁判所ニ於ケル判決ノ結果トシテ或者ガ強要セラルル労務尤モ右労務ハ公ノ機関ノ監督及管理ノ下ニ行ハルベク且右ノ者ハ私ノ個人、会社若ハ団体ニ雇ハレ又ハ其ノ指揮ニ服セザル者タルベシ

(d) 緊急ノ場合即チ戦争ノ場合又ハ火災、洪水、飢饉地震、猛烈ナル流行病若ハ家畜流行病、獣類、虫類若ハ植物ノ害物ノ侵入ノ如キ災厄ノ若ハ其ノ虞アル場合及一般ニ住民ノ全部又ハ一部ノ生存又ハ幸福ヲ危殆ナラシムル一切ノ事情ニ於テ強要セラルル労務

(e) 軽易ナル部落ノ労務ニシテ該部落ノ直接ノ利益ノ為部落民ニ依リ遂行セラレ従テ該部落民ノ負フベキ通常ノ公民義務ト認メラレ得ルモノ尤モ部落民又ハ其ノ直接ノ代表者ハ右労務ノ必要ニ付意見ヲ求メラルルノ権利ヲ有スルモノトス

第 三 条

 本条約ニ於テ「権限アル機関」ト称スルハ本国ノ機関又ハ関係地域ニ於ケル最高中央機関ヲ謂フ

第 四 条

1 権限アル機関ハ私ノ個人、会社又ハ団体ノ利益ノ為強制労働ヲ課シ又ハ課スルコトヲ許可スルコトヲ得ズ

2 一ノ締盟国ニ依ル本条約ノ批准ガ国際労働事務局長ニ依リ登録セラルル日ニ於テ私ノ個人、会社又ハ団体ノ利益ノ為ノ右強制労働ガ存在スル場合ニハ当該締盟国ハ本条約ガ右締盟国ニ対シ効力ヲ発生スル日ヨリ右強制労働ヲ完全ニ廃止スベシ

第 五 条

1 私ノ個人、会社又ハ団体ニ与ヘラルル免許ハ右私ノ個人、会社又ハ団体ガ利用シ又ハ取引スル生産物ノ生産又ハ蒐集ノ為ノ如何ナル形式ノ強制労働ヲモ生ゼシムルコトヲ得ズ

2 右強制労働ヲ生ゼシムル規定ヲ包含スル免許ガ存在スル場合ニハ本条約第一条ニ適合スル為右規定ハ能フ限リ速ニ廃止セラルベシ

第 六 条

 行政庁ノ職員ハ其ノ責任ノ下ニ在ル住民ニ何等カノ形式ノ労働ニ従事スルコトヲ奨励スルノ職務ヲ有スル場合ニモ該住民ノ全部又ハ其ノ中ノ何人カニ対シ私ノ個人、会社又ハ団体ノ為ニ労働セシムル為強制ヲ加フルコトヲ得ズ

第 七 条

1 行政上ノ職務ヲ行ハザル首長強制労働ヲ使用スルコトヲ得ズ

2 行政上ノ職務ヲ行フ首長ハ権限アル機関ノ明示ノ許可ヲ得テ強制労働ヲ使用スルコトヲ得尤モ本条約第十条ノ規定ニ従フモノトス

3 適法ニ認メラレタル首長ニシテ他ノ形式ニ於テ適当ノ報酬ヲ受ケザルモノハ個人ノ労務ヲ使用スルコトヲ得尤モ適当ノ規則ニ従フベク且濫用ヲ防止スル為一切ノ必要ナル措置ガ執ラルベキモノトス

第 八 条

1 強制労働ヲ使用スルノ一切ノ決定ニ付テノ責任ハ関係地域ニ於ケル最高民政機関ニ存スベシ

2 尤モ右機関ハ労働者ノ其ノ平常ノ居所ヨリノ移転ヲ伴ハザル強制労働ヲ強要スルノ権限ヲ最高地方機関ニ委任スルコトヲ得右機関ハ職務執行中ノ行政庁ノ職員ノ移動ヲ容易ナラシムル為及政府貯蔵品ノ運送ノ為労働者ノ其ノ平常ノ居所ヨリノ移転ヲ伴フ強制労働ヲ強要スルノ権限ヲモ本条約第二十三条ニ定メラルル規則ニ規定セラルルコトアルベキ期間ニ付及条件ニ従ヒ最高地方機関ニ委任スルコトヲ得

第 九 条

 本条約第十条ニ別ニ定メラルル場合ノ外強制労働ヲ強要スルノ権限アル機関ハ右労働ノ使用ヲ決定スルニ先チ左記ヲ確ムベシ

(a) 為サルベキ労務ガ之ヲ為スコトヲ要求セラルル部落ニ対シ重要ナル直接ノ利益ヲ有スルモノナルコ

(b) 右労務ガ現ニ又ハ急迫ニ必要ナルモノナルコ

(c) 右労務ヲ遂行スル為、類似ノ労務ニ付関係地区ニ於テ通常行ハルルモノヨリ不利ナラザル賃金率及労働条件ノ提供ニ依ル任意労働ヲ得ルコト不可能ナリシコト並ニ

(d) 利用シ得ベキ労力及現在ノ住民ノ右労務ヲ行フ能力ヲ考慮シ右労務ガ過重ノ負担ヲ右住民ニ対シ課セザルコト

第 十 条

1 租税トシテ強要セラルル強制労働行政上ノ職務ヲ行フ首長ニ依リ公共事業ノ遂行ノ為使用セラルル強制労働ハ漸次廃止セラルベシ

2 右廃止ニ至ル迄、強制労働租税トシテ強要セラルル場合及強制労働行政上ノ職務ヲ行フ首長ニ依リ公共事業ノ遂行ノ為使用セラルル場合ニ於テハ関係機関ハ先ズ左記ヲ確ムベシ

(a) 為サルベキ労務ガ之ヲ為スコトヲ要求セラルル部落ニ対シ重要ナル直接ノ利益ヲ有スルモノナルコ

(b) 右労務ガ現ニ又ハ急迫ニ必要ナルモノナルコ

(c) 利用シ得ベキ労力及現在ノ住民ノ右労務ヲ行フ能力ヲ考慮シ右労務ガ過重ノ負担ヲ右住民ニ対シ課セザルコト

(d) 右労務ガ労働者ノ其ノ平常ノ居所ヨリノ移転ヲ伴ハザルコト

(e) 右労務ノ遂行ガ宗教社会生活農業ノ要求ニ従ヒ指導セラルベキコト

第 十 一 条

1 推定年齢十八歳以上四十五歳以下ノ強壮ナル成年男子ノミ強制労働ニ徴集セラルルコトヲ得本条約第十条ニ定メラルル種類ノ労働ニ付テノ外左ノ制限及条件ニ従フベシ

(a) 関係者ガ伝染病ニ罹リ居ラザルコト並ニ右ノ者ガ所要労務ニ及其ノ遂行条件ニ身体上適スルコトヲ行政庁ニ依リ任命セラルル医師ガ可能ナル一切ノ場合ニ予メ決定スルコト

(b) 学校ノ教師及生徒並ニ一般行政庁ノ職員ヲ除外スルコト

(c) 各部落ニ於テ家族生活及社会生活ニ欠クベカラザル強壮ナル成年男子ノ数ヲ維持スルコト

(d) 夫婦及家族ノ関係ヲ尊重スルコト

2 前項(c)ノ適用ニ付テハ本条約第二十三条ニ定メラルル規則ハ一時ニ強制労働ニ徴集セラレ得ベキ常住ノ強壮ナル成年男子ノ割合ヲ定ムベシ尤モ常ニ右割合ハ如何ナル場合ニ於テモ二十五「パーセント」ヲ超ユルコトヲ得ズ右割合ヲ定ムルニ当リ権限アル機関ハ人口ノ密度、住民ノ社会上及身体上ノ発達、季節並ニ関係者ガ其ノ地方ニ於テ自己ノ為遂行スルコトヲ要スル作業ヲ斟酌スベク且一般ニ関係部落ノ日常生活ノ経済上及社会上ノ必要ヲ考慮スベシ

第 十 二 条

1 或者ガ十二月ノ一期間ニ於テ一切ノ種類ノ強制労働ニ徴集セラレ得ベキ最長期間ハ労務場所ニ往復スルニ要スル期間ヲ含ミ60日ヲ超ユルコトヲ得ズ

2 強制労働ガ強要セラルル各労働者ハ其ノ完了シタル右労働ノ期間ヲ示セル証明書ヲ交付セラルベシ

第 十 三 条

1 強制労働ガ強要セラルル者ノ平常ノ労働時間ハ任意労働ニ付通常行ハルルモノト同一タルベク且平常ノ労働時間ヲ超ユル労働時間ハ任意労働ニ対スル超過時間ニ付通常行ハルル率ニ於テ報酬ヲ与ヘラルベシ

2 一週一日ノ休日ハ何レカノ種類ノ強制労働ガ強要セラルル一切ノ者ニ対シ与ヘラルベク且右ノ日ハ関係地域又ハ関係地方ニ於ケル伝統又ハ慣習ニ依リ定メラルル日ト能フ限リ合致スベシ

第 十 四 条

1 本条約第十条ニ定メラルル強制労働ヲ除キ一切ノ種類ノ強制労働ハ労力ガ使用セラルル地方又ハ労力ガ徴集セラルル地方ノ何レカニ於テ類似ノ労務ニ付通常行ハルル率(其ノ何レガ高キヲ問ハズ)ヨリ低カラザル率ニ於テ現金ヲ以テ報酬ヲ与ヘラルベシ

2 首長ニ依リ其ノ行政上ノ職務ノ執行上使用セラルル労力ニ付テハ前項ノ規定ニ依ル賃銀ノ支払ハ能フ限リ速ニ採用セラルベシ

3 賃銀ハ各労働者ニ各別ニ支払ハルベク且其ノ部落首長又ハ他ノ権力者ニ支払ハルベカラズ

4 賃銀支払ニ付テハ労務場所ヘノ旅行ノ往復ニ要スル日数ハ労務日数トシテ計算セラルベシ

5 本条ハ日常ノ糧食ガ賃銀ノ一部トシテ与ヘラルルコトヲ妨ゲザルベク右糧食ハ其ノ相当スト認メラルル金額ト少クトモ同価値タルベシ尤モ賃銀ヨリノ控除ハ租税ノ支払ノ為ニモ、作業ノ特殊ナル状態ノ下ニ労働者ヲ其ノ労務ヲ行フニ適スル状態ニ於テ維持スル為労働者ニ供給セラルル特殊ノ食物、被服若ハ宿泊ノ為ニモ又ハ工具類ノ供給ノ為ニモ為サルルコトヲ得ズ

第 十 五 条

1 労働者ノ労働ニ基因スル災害又ハ疾病ニ対スル労働者補償ニ関スル法令又ハ規則及死亡シ又ハ無能力ト為リタル労働者ノ被扶養者ノ為ノ補償ヲ規定スル法令又ハ規則ニシテ関係地域ニ於テ実施セラレ又ハ実施セラルベキモノハ強制労働ガ強要セラルル者及任意労働者ニ均シク適用セラルベシ

2 労働者ニシテ其ノ労働ニ基因スル災害又ハ疾病ニ依リ自己ヲ養フコトガ全部又ハ一部不能ト為レル者ノ生計ヲ確保シ及其ノ労働ニ基因スル無能力又ハ死亡ノ場合ニ於テ右労働者ガ実際ニ扶養スル者ノ生活ヲ確保スル措置ヲ執ルハ何レノ場合ニ於テモ労働者強制労働ニ使用スル機関ノ義務タルベシ

第 十 六 条

1 特殊ノ必要ノ場合ノ外強制労働ガ強要セラルル者ハ食物及気候ガ其ノ慣レタルモノト著シク異ルガ為其ノ健康ヲ害スルガ如キ地方ニ移送セラレザルベシ

2 如何ナル場合ニ於テモ右労働者ノ移送ハ右労働者ヲ其ノ状態ニ適合セシメ且其ノ健康ヲ保障スル為必要ナル衛生及宿泊ニ関スル一切ノ措置ガ厳格ニ施サレ得ルニ非ザレバ許可セラルルコトヲ得ズ

3 右移送ガ避ケ得ラレザル場合ニハ権限アル医師ノ勧告ニ基キ食物及気候ノ新シキ状態ニ漸次慣レシムル措置ヲ執ルベシ

4 右労働者ガ其ノ慣レザル規則正シキ労働ヲ為スコトヲ要求セラルル場合ニ於テハ其ノ規則正シキ労働ニ慣ルルコトヲ確保スル為特ニ漸進的訓練、労働時間、休憩時間ノ設定及必要ナルコトアルベキ食物ノ増加又ハ改善ニ関シ措置ヲ執ルベシ

第 十 七 条

 労働者ガ労務場所ニ長期間留ルコトヲ必要ナラシムル建設又ハ保存ノ事業ノ為強制労働ヲ使用スルコトヲ許可スルニ先チ権限アル機関ハ左記ヲ確ムベシ

(1) 労働者ノ健康ヲ保障シ且必要ナル医療ヲ確保スル為一切ノ必要ナル措置ガ執ラルルコト就中(a)労働者ガ労務開始ニ先チ及労務期間中一定ノ期間毎ニ医学的検査ヲ受クルコト(b)一切ノ要求ニ応ズル為必要ナル薬局、病舎、病院及設備ト共ニ充分ナル医員ガ存在スルコト及(c)労務場所ノ衛生状態並ニ飲料水、食糧、燃料、炊事道具及必要アル場合ノ住居及被服ノ供給ガ満足ナルコ

(2) 労働者ノ生計ヲ確保スル為特ニ、労働者ノ要求ニ基キ又ハ其ノ同意ヲ得テ安全ナル方法ヲ以テ賃銀ノ一部ヲ家族ニ送付スルコトヲ容易ナラシムコトニ依リ右生計ヲ確保スル為一定ノ措置ヲ執ルコト

(3) 労働者ガ労務場所ニ往復スル旅行ハ行政庁ノ費用ヲ以テ且其ノ責任ノ下ニ為サルベク右行政庁ハ利用シ得ベキ一切ノ運送方法ヲ最完全ニ使用スルコトニ依リ右旅行ヲ容易ナラシムベキコト

(4) 一定期間ノ労働不能ヲ生ゼシムル疾病又ハ災害ノ場合ニ於テハ労働者行政庁ノ費用ヲ以テ送還セラルルコト

(5) 労働者ニシテ其ノ強制労働ノ期間満了ノ際任意労働者トシテ留ルコトヲ欲スルコトアルベキモノガ其ノ無料ニテ送還セラルルノ権利ヲ2年間喪失スルコトナクシテ之ヲ許可セラルルコト

第 十 八 条

1 人又ハ貨物ノ運送ノ為ノ強制労働例ヘバ運搬夫又ハ船頭ノ労働ハ能フ限リ最短キ期間内ニ廃止セラルベシ右廃止ニ至ル迄ハ権限アル機関ハ就中左記ヲ定ムル規則ヲ公布スベシ(a)右労働ガ職務執行中ノ行政庁ノ職員ノ移動ヲ容易ナラシムル為若ハ政府貯蔵品ノ運送ノ為又ハ極メテ緊急ナル必要ノ場合ニ於テ職員以外ノ者ノ運送ノ為ノミニ使用セラルベキコト(b)右ニ使用セラルル労働者ガ医学的検査ノ可能ナル場合ニハ身体上適スト医学上証明セラルベキコト及右医学的検査ノ実行シ難キ場合ニハ右労働者ヲ使用スル者ガ労働者ガ身体上適スル者ニシテ且伝染病ニ罹リ居ラザルコトヲ確保スルノ責任ヲ負フベキコト(c)右労働者ガ運搬スルコトヲ得ベキ最大荷重(d)右労働者ガ其ノ家庭ヨリノ徴集セラルルコトアルベキ最大距離(e)労働者ガ其ノ家庭ニ帰還スルニ要スル日数ヲ含ミ一月又ハ他ノ期間ニ付其ノ徴集セラルルコトアルベキ最大日数並ニ(f)此ノ種ノ強制労働ヲ要求シ得ル者及右ノ者ガ之ヲ要求シ得ル限度

2 前項(c)、(d)及(e)ニ掲ゲラルル最大限度ヲ定ムルニ当リ権限アル機関ハ当該労働者ガ徴集セラルル住民ノ身体上ノ発達、労働者ガ旅行スルコトヲ要スル地方ノ性質及気候状態ヲ含ム一切ノ関係要素ヲ考慮スベシ

3 権限アル機関ハ運搬セラルベキ重量及通行セラルベキ距離ノミナラズ道路ノ性質、季節及他ノ一切ノ関係要素ヲモ考慮スベキモノト解シ右労働者ノ通常ノ日程ガ平均一日八時間労働ニ相当スル距離ヲ超エザルベキコト並ニ通常ノ日程ヲ超ユル行程時間ガ課セラルル場合ニハ右労働者ハ普通率ヨリモ一層高キ率ニ於テ報酬ヲ与ヘラルベキコトヲ尚規定スベシ

第 十 九 条

1 権限アル機関ハ飢饉又ハ食糧品ノ欠乏ニ対スル用意ノ手段トシテノミ且常ニ食糧又ハ生産物ガ之ヲ生産スル個人又ハ部落ノ所有ニ帰スベキコトノ条件ノ下ニノミ強制耕作ヲ使用スルコトヲ許可スベシ

2 本条ハ生産ガ法令又ハ慣習ニ基キ部落ヲ基本トシテ組織セラレ且生産物又ハ其ノ販売ヨリ生ズル利益ガ該部落ノ所有ニ帰スル場合ニハ法令又ハ慣習ニ基キ該部落ニ依リ要求セラルル労務ヲ遂行スルノ該部落民ノ義務ヲ解除スルモノト解セラルルコトヲ得ズ

第 二 十 条

 部落ガ其ノ部落民ノ或者ニ依リ犯サルル犯罪ニ対シ罰セラルルコトアルベキ団体処罰法令ハ処罰手段ノ一トシテノ部落ニ依ル強制労働ニ関スル規定ヲ包含スルコトヲ得ズ

第 二 十 一 条

 強制労働ハ鉱山ニ於ケル地下労働ノ為使用セラルルコトヲ得ズ

第 二 十 二 条

 本条約ヲ批准スル締盟国ガ其ノ本条約ノ規定ノ実施ノ為執リタル措置ニ関シ国際労働機関憲章第二十ニ条ノ規定ニ従ヒ国際労働事務局ニ提出スルコトヲ約スル年報ハ各関係地域ニ付強制労働ガ該地域ニ於テ使用セラレタル程度、之ガ使用セラレタル目的、疾病及死亡ノ率、労働時間、賃銀支払方法及賃銀率ニ関スル能フ限リ完全ナル情報並ニ他ノ一切ノ関係情報ヲ包含スベシ

第 二 十 三 条

1 本条約ノ規定ノ実施ノ為権限アル機関ハ強制労働ノ使用ヲ規律スル完全且精細ナル規則ヲ公布スベシ

2 右規則ハ就中強制労働ガ強要セラルル者ヲシテ労働条件ニ関スル一切ノ異議ヲ当該機関ニ申立ツルコトヲ得シメ及右異議ガ審査セラレ且考慮セラルルコトヲ確保スル規定ヲ包含スベシ

第 二 十 四 条

 任意労働ノ監督ノ為設ケラレタル現在ノ労働監督機関ノ権限ヲ強制労働ノ監督ニ及ブ様拡張スルコトニ依リ又ハ他ノ何等カノ適当ナル方法ニ依リ強制労働ノ使用ヲ規律スル規則ガ厳格ニ実施セラルルコトヲ確保スル為一切ノ場合ニ於テ適当ナル措置ヲ執ルベシ右労働ガ強要セラルル者ニ右規則ヲ知悉セシムルコトヲ確保スル為ノ措置ヲモ亦執ルベシ

第 二 十 五 条

 強制労働ノ不法ナル強要ハ刑事犯罪トシテ処罰セラルベク又法令ニ依リ科セラルル刑罰ガ真ニ適当ニシテ且厳格ニ実施セラルルコトヲ確保スルコトハ本条約ヲ批准スル締盟国ノ義務タルベシ

第 二 十 六 条

1 本条約ヲ批准スル国際労働機関ノ各締盟国ハ右締盟国ガ対内的管轄事項ニ関スル義務ヲ受諾スルノ権利ヲ有スル限リ其ノ主権、管轄、保護、宗主権、後見又ハ権力ノ下ニ置カルル地域ニ対シ之ヲ適用スルコトヲ約ス尤モ右締盟国ハ国際労働機関憲章第35条ノ規定ヲ援用センコトヲ欲スルトキハ左記ヲ示ス宣言ヲ該国ノ批准ニ附加スベシ

(1) 右締盟国ガ変更ヲ加ヘズシテ本条約ノ規定ヲ適用セントスル地域

(2) 右締盟国ガ変更ヲ加ヘテ本条約ノ規定ヲ適用セントスル地域及右変更ノ細目

(3) 右締盟国ガ其ノ決定ヲ留保スル地域

2 前記宣言ハ批准ノ一部ト看做サルベク且批准ノ効力ヲ有スベシ何レノ締盟国モ原宣言ニ於テ本条(2)及(3)ノ規定ニ従ヒ為サレタル留保ノ全部又ハ一部ヲ爾後ノ宣言ニ依リ取消スコトヲ得

第 二 十 七 条

 国際労働機関憲章ニ定ムル条件ニ依ル本条約ノ正式批准ハ登録ノ為国際労働事務局長ニ之ヲ通告スベシ

第 二 十 八 条

1 本条約ハ国際労働事務局ニ其ノ批准ヲ登録シタル締盟国ノミヲ拘束スベシ

2 本条約ハ事務局長ガ国際労働機関ノ締盟国中ノニ国ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ十二月後ニ於テ効力ヲ発生スベシ

3 爾後本条約ハ他ノ何レノ締盟国ニ付テモ其ノ批准ヲ登録シタル日ヨリ十二月後ニ於テ効力ヲ発生スベシ

第 二 十 九 条

 国際労働機関ノ締盟国中ノニ国ガ国際労働事務局ニ本条約ノ批准ノ登録ヲ為シタルトキハ事務局長ハ国際労働機関ノ一切ノ締盟国ニ右ノ旨ヲ通告スベシ事務局長ハ爾後該機関ノ他ノ締盟国ノ通告シタル批准ノ登録ヲ一切ノ締盟国ニ同様ニ通告スベシ

第 三 十 条

1 本条約ヲ批准シタル締盟国ハ本条約ノ最初ノ効力発生ノ日ヨリ十年ノ期間満了後ニ於テ国際労働事務局長宛登録ノ為ニスル通告ニ依リ之ヲ廃棄スルコトヲ得右ノ廃棄ハ該事務局ニ登録アリタル日ノ後一年間ハ其ノ効力ヲ生ゼズ

2 本条約ヲ批准シタル各締盟国ニシテ前項ニ掲グル十年ノ期間満了後一年以内ニ本条ニ定ムル廃棄ノ権利ヲ行使セザルモノハ更ニ五年間拘束ヲ受クベク又爾後各五年ノ期間満了毎ニ本条ニ定ムル条件ニ依リ本条約ヲ廃棄スルコトヲ得

第 三 十 一 条

 国際労働事務局ノ理事会ハ本条約ノ効力発生ヨリ各五年ノ期間満了毎ニ本条約ノ施行ニ関スル報告ヲ総会ニ提出スベク且其ノ全部又ハ一部ノ改正ニ関スル問題ヲ総会ノ会議事項ニ掲グベキヤ否ヤヲ審議スベシ

第 三 十 二 条

1 総会ガ本条約ノ全部又ハ一部ヲ改正スル新条約ヲ採択スル場合ニハ締盟国ニ依ル新改条約ノ批准ハ新改条約ガ効力ヲ発生シタルトキ前記第三十条ノ規定ニ拘ラズ猶予ノ要件ヲ要セズシテ当然ニ本条約ノ廃棄ヲ生ゼシムベシ

2 新改条約ノ効力発生ノ日ヨリ本条約ハ締盟国ニ依リ批准セラレ得ザルニ至ルベシ

3 尤モ本条約ハ之ヲ批准シタルモ改正条約ヲ批准セザル締盟国ニ対シテハ其ノ現在ノ形式及内容ニ於テ引続キ効力ヲ有スベシ

第 三 十 三 条

 本条約仏蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トス