2007-06-18
■ [インターネット]池田信夫ブログのコメント欄に見る池田氏の本性

池田信夫氏のブログに、「慰安婦問題の意見広告」というエントリーがあった。内容については、勿論問題が多いと思うが、彼のこれまでのエントリーの内容からしても、予想の範囲内の内容。
興味深いのは、コメント欄での池田氏の対応だ。彼は意外とコメント欄に返答をしているが、エントリーほど用心深くないのか、彼の本性が垣間見れることがある。
今回のエントリーには既に大量のコメントがあるが、Phlsさんの指摘は極めて常識的な、まっとうなものであった。以下に引用してみる。
2007-06-17 20:16:01
池田先生へ
この広告出鱈目が多いですね。
幾つかの証明
まずは明らかなところから。
Fact5
慰安婦制度では慰安婦の方の保護規則はありませんでした。対して公娼制度は「廃業・拒否の自由」等がありました。ですので、「慰安婦は公娼制度の下で働いており」は間違いです。
それとFact5の米軍資料(APO 689)は「日本人捕虜尋問報告書第49号」のことですが、
http://members.at.infoseek.co.jp/ash_28/ca_i02_1.html
この文書には
「慰安所の楼主」は、それぞれの慰安婦が、契約を結んだ時点でどの程度の債務額を負っていたかによって差はあるものの、慰安婦の稼ぎの総額の50ないし60パーセントを受け取っていた。」
「多くの「楼主」は、食料、その他の物品の代金として慰安婦たちに多額の請求をしていたため、彼女たちは生活困難に陥った。」
ともありますので、広告の
(http://dj19.blog86.fc2.com/より引用)
「慰安婦の多くが佐官どころか将軍よりも遥かに高い収入を得ており(アメリカ陸軍インド・ビルマ戦域軍所属アメリカ戦時情報局心理作戦班 *APO 689によって報告されている)」
というところは無条件では正しいと言えないはずです。
そしてこのAPO 689が扱ってる慰安所(ミッチナの慰安所)についてのもう一つの資料(心理戦尋問報告 第二号)を読むと、上記の「」内引用部分は間違っていることが分かります。何故なら「慰安婦の暮らしは良かった」という記述は消えて「生活が苦しい」という記述はそのままだからです。
http://dj19.blog86.fc2.com/blog-entry-68.html
それからFact1について言えば、その広告で参照されている資料は
「軍慰安所従業婦募集に関する件」
「支那渡航婦女の取扱に関する件」
「支那渡航婦女に関する件伺」
ですが、これは広告の言っているように「女性をその意思に反して強制して働かせることのないよう民間業者に対して警告している文書」ではありません。
少なくとも前2者についてはそうです。
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~knagai/2semi/nagai.html
「両文書の意図が「略取誘拐」の取締にあったのではないと結論せざるをえないのである」
むしろこの2つは
「慰安婦の調達に支障が生じないようにする」
それと広告全般を通して、都合の悪い史料の無視・論点の矮小化が行われています。
例えば、慰安婦の方を「前線で」働かせた史料がありますが、慰安婦の方は兵士ではないので、非戦闘員の保護責任の観点から言って問題があるはずです。
(この証拠は例えば、
http://www.awf.or.jp/program/pdf/ianfu_1.pdf
「施設の一端として前線各地に慰安所(事実上の貸座敷)を左記要領に依り設置することとなれり」)
他にもありますが、こんな学術的に酷いものに賛意を表すと池田先生の名誉に関わると思いますので、このエントリは撤回した方がいいと思います。
私も内容については色々と言いたい事もあるが、概ねこんなところである。特に刺激的な言葉も使っておらず、常識的なコメントといえよう。しかし、驚くべきは、これに対する池田氏の返答。(なお、これが本当に池田信夫氏であるかどうかは私には調べられないが、このコメント欄が許可制であり、本人が本人名義の別人のコメントを許可することがありえないことからすると、本人である蓋然性は高いといえる。)
警告 (池田信夫)
2007-06-17 20:33:00
慰安婦の暮らしが苦しかったら、どうだというんですかね。こんな細かいことしか、あら捜しできないの? 軍が「強制連行」した証拠を出してみろよ。
「批判的なコメントを削除している」とかいう批判があるけど、批判的な意見って、こういうナンセンスなものしかないんですよ。ちゃんとした批判なら、いくらでも載せます。
池田氏にとってみれば、Phlsさんの指摘は「ナンセンス」だそうだ。なぜナンセンスなのかは、一切説明がない。私にとっては、「ちゃんとした批判」以外の何ものでもないのだが。いったい、彼の考える「ちゃんとした批判」とはどういうものか興味もあるが、このコメント欄には彼に対する賛辞の評しか掲載されておらず、検証のしようもない。そもそも、コメント欄が許可制であるのだから、これも必然といえよう。
しかし、面白いのは、「こんな細かいことしか、あら捜しできないの?」「軍が「強制連行」した証拠を出してみろよ。」という言動。ごく最近、どこかで見たことのあるようなないような。2chの書き込みも、こういったいわゆる「知識人」とされている人達の言動も、大差がないことが非常に残念であった。結局、その根底にあるものは共通している、のかもしれない。
そして、「慰安婦の暮らしが苦しかったら、どうだというんですかね。」という発言。そもそも事実の捉え方にかなりの温度差があることは分かっているが、そこまで言ってしまえるのか。彼にとっては、人間は一つのコマのような存在であり、歴史は単なる取材の対象でしかないのかもしれない。しかし、そのような「知識人」が世論をリードしようとしている。いったい何故だろう。