「強制売春説」など RSSフィード
 

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1noharranoharra   「強制売春説」など

nagaikazu nagaikazu 『 ノーモア様へ

 はじめまして。永井和と申します。ふとしたことから、私の論文の解釈が議論になっているのを知り、このblogにたどりつきました。

 私にできることがありましたら、お手伝いさせていただきます。

 ところで、ebizoさんのおっしゃる、「従軍慰安婦の実態は商行為か性奴隷か」という問題設定は変ですね。

 「性奴隷(制)」とはsex slavery またはsexual slaveryの日本語訳ですが、アメリカではふるくはwhite slaveryという言葉が使われていました。直訳すると、どぎつい感じになりますが、19世紀まで奴隷制が存在していたアメリカでの語用だということを、留意しておく必要があります。

 sex slaveryまたはsexual slaveryは、意訳すれば、「強制売春」となります。だいたいが人身売買や女性をだまして拘束し、売春をさせるわけですね。

 そうして売春婦になった(白人の)女性のことを(黒人の)奴隷になぞらえてwhite slaveとよび、さらに人種的な意味をもつ表現をさけるためにsexual slaveという語になったのだと思われます。

 ですので、sexual slaveと「商行為」とは両立します。sexual slaveを買う人はもちろんお金をはらってますから、これは「商行為」にほかなりません。

 sexual slaveに対立するのは、「自由売春」です。女性が強制に由らずして、自分の意志によって、対価とひきかえに性的サービスをおこなう。

 「従軍慰安婦の実態は商行為か性奴隷か」という問題設定は、問題設定としてはなりたちません。あるいは成り立つのは、日本の特定の論者だけの中であって、ローカルな問題に限定されます。

 また、「従軍慰安婦の実態は強制売春か自由売春か」という問題設定なら、なりたちますが、それは最初から答えがでている問題であって、今まで誰も問題にしたことはないと思います。

 もちろん、私が自分の論文で問題にしたのは、「軍慰安所は軍の施設なのかあるいは民間の施設なのか」という枠組みです。』 (2007/04/01 18:55)

noharra noharra 『永井和先生

こんにちわ。野原燐といいます。(ノーモア21さん横から失礼します。)

私が3月9日にブックマークして以来、永井さんの「日本軍の慰安所政策について」は現在、106ブックマークを獲得していますね。

長くて地味な学術論文としては異例の記録だと思います。しかも、吉見先生と永井先生の微妙な差異を評価しての支持も少なくないと思われます。“微妙な差異”にデリケートになってしまわざるをえない(なかった派優位の)言説情況は不幸なことですが。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~knagai/works/guniansyo.html

永井先生には

http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~knagai/2semi/menu.html

という頁もありますね。こちらの方はまだ話題になっていなようですが。

国際人として摩擦無く生きていくためには、こちらの方もブックレットにでもして全大学生に強制した方が良い、と思うのはわたしだけではないでしょう。

これからもよろしくお願いします。』 (2007/04/02 08:11)

nomore21 nomore21 『永井先生

このような場末の「急造」ブログにわざわざ御来訪くださりありがとうございます。野原さんも仰っていたように先生の論文は各所で引用され、話題を呼んでいます(そして私が見る限りそのほとんどが「勉強になった」という好意的評価です)。学術論文であるにもかかわらず、非常に明快であり私も非常に勉強させて頂きました。極々少数ですが、中には理解できない人もいるようですけれども(笑)

また「sexual slave」に関する有意義な御指摘も感謝いたします(なるほど「sexual slave」と「商行為」は必ずしも対立する概念ではないのですね)。

http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~knagai/2semi/menu.html

も少しづつ読ませて頂いてます。

いずれにしましてもこの問題に関して、アカデミズムの立場から情報を発信なさる先生の存在は貴重です。これからも宜しくお願い致します。』 (2007/04/02 12:04)

ebizoh ebizoh 『>永井和教授

はじめまして。

ご本人であれば、研究の合間でよいので、ぜひご教授賜りたいことがありますので、質問させていただきます。

Q1:white slaveryおよびsexual slaveryという言葉は、意訳すれば強制された売春婦という意味であり、日本の議論においては広義の強制下の売春婦に相当する意味であるという理解でよいのですね?

Q2:旧日本軍のsexual slaveryをそういうニュアンスどおりのものとして米国民は受け取っていますか?米下院慰安婦決議案の内容を読むと、単なる広義の強制下の売春婦以上にむごい性奴隷的な実態までが事実関係として記載されているのですが。

>「従軍慰安婦の実態は商行為か性奴隷か」という問題設定は、問題設定としてはなりたちません。あるいは成り立つのは、日本の特定の論者だけの中であって、ローカルな問題に限定されます。

私は、日本での議論とホンダ議員の発言を踏まえた大雑把な論点整理をさせていただいておりますので、専門家の立場からは暴論に映るかもしれませんが…

Q3:日本での3大対立ポイントは、性奴隷的実態の有無と広義の強制の有無と狭義の強制連行の有無ですよね?

>「従軍慰安婦の実態は強制売春か自由売春か」という問題設定なら、なりたちますが、それは最初から答えがでている問題であって、今まで誰も問題にしたことはないと思います。

そうでしょうか?

Q4:公娼の戦地版という秦氏の説は自由売春ないし管理売春の一類型という主張であり、吉見氏の説は広義の強制売春ないし強制説に基づく売春だと理解していたので、今までに問題となっており、かつ、その問題には答えが出ていないと思いますが、違うのでしょうか?

>私が自分の論文で問題にしたのは、「軍慰安所は軍の施設なのかあるいは民間の施設なのか」という枠組みです。

教授の新視点には、勉強させていただきました。

Q5:しかし、ベトナム戦争時の韓国人慰安婦は、韓国人研究者によると、軍の補給品扱いだったのですよね?ある意味で軍の施設で働く人間よりも非人道的な扱いであり、国家責任が日本より強く生じてしまいかねないと思いますが、この点はどうお考えでしょうか?私は旧日本軍慰安婦にもベトナム戦争時の韓国軍慰安婦にも法的責任は生じないと考えておりますが。』 (2007/04/02 15:05)

ebizoh ebizoh 『

一部訂正です。

×ベトナム戦争時の韓国人慰安婦

ベトナム戦争時の韓国軍慰安婦』 (2007/04/02 20:27)

noharra noharra 『エビゾーさんへ質問

>>>Q3:日本での3大対立ポイントは、性奴隷的実態の有無と広義の強制の有無と狭義の強制連行の有無ですよね?<<<

そんなこと誰が決めたのですか?』 (2007/04/02 23:07)

ebizoh ebizoh 『野原さんへ

いや、誰も決めてませんよ。

せっかく専門家ご本人?が降臨されているのですから、この貴重な好機に疑問点は聞いておかなくては、と思って質問しているだけです。しかもQと?ではさんでるでしょ?日本語も英語も読めませんか?

回答内容に納得すれば、なるほど、と受け入れるだけのことですし、ノーモア氏との議論での無駄も無くなり、一石二鳥でしょう。

私の先祖は3代にわたって学者なので、自説や学説状況が誤解されるのを嫌がる学者の気持ちは良く理解しておりますし、学者を神聖視してありがたがる愚民にもなれません。学生時代に指導を受けた教授の方々も、みな質問した方が喜びましたよ。』 (2007/04/02 23:54)

nagaikazu nagaikazu 『野原様

 はじめまして。私のWebサイトに掲載した拙稿に注目し、広く紹介していただき、ありがとうございます。

 野原さんのblogで、ノーモアさんのこのblogのことを知り、やってまいりました。よろしくお願いします。

 拙稿を公開してからかなりの年数がたちますが、今までこれほど注目されたことがありませんので、少しとまどっております。

 拙稿はたしかに吉見氏の解釈に異論を唱えていますが、これはアカデミックな細かい議論であって、おおすじにおいては大きな差はありません。

 慰安婦問題についての吉見氏の学問的貢献ははかりしれないものがあり、私など足もとにも及びません。

 拙稿は、慰安婦問題を総括的に論じることを目的としたものではありません。もともとは小林よしのり氏の「良い関与論」の資料的根拠とされている、いわゆる「副官通牒」の解釈がデタラメであることを示すために、書いたのであり、論文の構成あるいは叙述レトリックも、それによって逆に規定されています。そいうバイアスがかかっていることを理解していただきたいのですが、なかなか思うようにはいきません。

 野原さんが言及されている「自由主義史観を読む」に掲載した私の第一稿は、史料の紹介を中心にしていることもあって、さらに誤解されやすいようです。

 enjoykoreaという掲示板で、日本軍は「強制連行」しなかった、慰安所制度は公娼制度の現実からみて合法であり、何の問題もなかったとの主張を証明する材料として、上記の拙論が使われているのを見て、さすがの私も驚きました。

 ですので、ブックレットなどにして配布するのは恐ろしくてできません(笑い)。』 (2007/04/03 12:07)

nagaikazu nagaikazu 『ノーモア様

 拙稿を評価していただき、まことにありがとうございます。ノーモア様の奮闘ぶりには、頭がさがります。

 もしも私がしゃしゃり出たことで、ご迷惑が及ぶようでしたら、遠慮なく言ってください。退散いたしますので。

 

 sex(ual) slave(古くはwhite slave)に対立する言葉は、たぶん、sex workerだろうと思います。現実には後者は前者の言いかえにすぎないことも多いわけですが、概念としては対立概念でしょう。

奴隷」に対する「労働者」。そのちがいは、雇用者との関係にあって、サービスを提供する相手(すなわち顧客)との関係にあるのではありません。

 顧客からサービスの対価として金を受け取る(すなわち「商行為」である)のはどちらも同じ。

 その女性がsex(ual) slaveだから、タダでいいなんてことはありません。そんなことをしたら、sex(ual) slaveの雇用者である売春業者の商売がなりたちません。

 ですので、「性奴隷か、商行為か」などという問題設定そのものが、最初からナンセンスなのです。

 あ、それから、これは野原さんへのメッセージに先に書いておくべきことでしたが、これ以降は、「先生」をつけていただくのは、ご無用にねがいます。ただの永井さん、もしくは永井様で十分ですので。』 (2007/04/03 12:22)

nagaikazu nagaikazu 『ebizoh様

はじめまして。まず、私の以前のコメントで、あなたのハンドルの表記を誤記していたことを、お詫びします。失礼いたしました。

 さて、お尋ねの件ですが、質問が5つもありますので、一度には返答できかねますが、その点はご了承ください。

>Q1:white slaveryおよびsexual slaveryという言葉は、意訳すれば強制された売春婦という意味であり、日本の議論においては広義の強制下の売春婦に相当する意味であるという理解でよいのですね?

 お答えします。「white slaveryおよびsexual slaveryという言葉は、意訳すれば強制された売春婦という意味である」ことは、私がすでに述べたとおりですので、まちがいありません。

 しかし、そのあとの「日本の議論においては広義の強制下の売春婦に相当する意味」であるかどうかは、この「広義の強制下」の意味が何であるかによって、Yesともなり、またNoともなりえます。

 そこで、まず、ebizohさんのおっしゃる「広義の強制下」が何を意味するのか、それをうかがってから、再度返答させていただきます。

Q2:旧日本軍のsexual slaveryをそういうニュアンスどおりのものとして米国民は受け取っていますか?米下院慰安婦決議案の内容を読むと、単なる広義の強制下の売春婦以上にむごい性奴隷的な実態までが事実関係として記載されているのですが。

 私はアメリカに住んだ経験もありませんし、現にアメリカに住んでいませんので、今現在の米国民がどういうニュアンスで感じているのかはわかりません。

 しかし、親日派アメリカ国務省の役人が「強制連行の有無はそもそも問題ではない」(安倍首相の対応は米国民には理解されず、かえって日本のイメージを悪化させるだけだ)との趣旨の発言しているという記事をどかこで、読んだ記憶があります。

 アメリカヨーロッパにおいてwhite slaveという言葉がどのような意味で使われてきたかについて、歴史の勉強として学んだことがありますが、sex(ual) slaveがwhite slaveの現代的な表現だとすれば、それは強制売春売春婦という以上の意味をもちえません。

 1910年に「醜業を行わしむる為の婦女売買取締に関する国際条約」(いわゆる「醜業条約」)が成立し、日本も批准しました。この条約の英語名は、Convention for the Suppression of the ”White Slave Traffic” です。つまり、1910年当時の日本外務省は、

”White Slave Traffic”を「醜業を行わしむる為の婦女売買」と訳したのです。Trafficは「婦女売買」に該当しますから、White Slaveは「(女性に)醜業を行わしむること」、すなわち「強制売春」を意味します。

 また、同じ年にアメリカで制定されたいわゆるマン法は、正式名をWhite-Slave Traffic Actと言い、これは「売春規制法」として知られています。

 なお、日本人がアメリカでの言葉の使われ方(そこでの語義の説明が正確であるかどうかは別として)を知るてっとり場合方法は、Wikipediaで引いてみることですが、Wikipediaの説明でも、sex(ual) slaveryは、forced prosutitutionとされています。

 米下院決議は、`comfort women’ system of forced military prostitution by the Government of Japanとしています。

 これは`comfort women’ systemは、forced military prostitution by the Government of Japanであると言っているわけですが、日本語に訳せば、「慰安婦制度は日本政府による軍用強制売春であった」となりますね。

 ただ、通常の強制売春ではみられない虐待の事例がみられたと言っていますが、基本的には「強制売春」という認定ですね。

 それよりも、ebizoh様は、sex(ual) slaveryを「性奴隷制」と直訳したうえで、それを通常の「強制売春」とは異なるものとして把握されているようですが、その「単なる広義の強制下の売春婦以上にむごい性奴隷的な実態」にいうところの「性奴隷」とは、いったいどのようなものなのですか。それが明らかでないと、ご質問には答えようがないですね。

 

 長くなりましたので、今日はここまでとさせていただきます。』 (2007/04/03 12:59)

ebizoh ebizoh 『>永井和教授

>私の以前のコメントで、あなたのハンドルの表記を誤記していたことを、お詫びします。失礼いたしました。

いえいえ。単なる誤記なので全く気にしておりません。

わざわざお詫びいただき、恐縮です。

ご研究の合間の貴重な時間を、素人の素朴な質問に丁寧に答えてくださり、感謝します。

>「日本の議論においては広義の強制下の売春婦に相当する意味」であるかどうかは、この「広義の強制下」の意味が何であるかによって、Yesともなり、またNoともなりえます。

>ebizohさんのおっしゃる「広義の強制下」が何を意味するのか

私としては、日弁連報告の定義または吉見氏の定義を念頭に置いています。いわゆる強制説(最広義の説)だけが問題としている人種差別は除外し、それ以外の甘言威迫による業者の連行や性奴隷状態に至らない程度の虐待などを含む概念と考えています。

親日派アメリカ国務省の役人が「強制連行の有無はそもそも問題ではない」(安倍首相の対応は米国民には理解されず、かえって日本のイメージを悪化させるだけだ)との趣旨の発言しているという記事をどかこで、読んだ記憶があります。

>sex(ual) slaveがwhite slaveの現代的な表現だとすれば、それは強制売春売春婦という以上の意味をもちえません。

強制売春下の売春婦という意味だけで捉えるなら、当時の一般の公娼の一部にもいたでしょうから、sexual slaveryという用語を使うのは理解できますが、問題は、その用語法が、強制売春の主体が日本軍であり業者ではないというイメージを世界的に広めている点にあると思います。

私の理解は基本的に秦説によるので、軍は顧客であり業者が主体ですから。

>米下院決議は、`comfort women’ system of forced military prostitution by the Government of Japanとしています。

>これは`comfort women’ systemは、forced military prostitution by the Government of Japanであると言っているわけですが、日本語に訳せば、「慰安婦制度は日本政府による軍用強制売春であった」となりますね。

正に、この日本政府が主体とされているところが、秦説からは問題になると思います。

>ただ、通常の強制売春ではみられない虐待の事例がみられたと言っていますが、基本的には「強制売春」という認定ですね。

>「単なる広義の強制下の売春婦以上にむごい性奴隷的な実態」にいうところの「性奴隷」とは、いったいどのようなものなのですか。

下院決議案の事実関係部分の、その通常の強制売春より強度の虐待事例が、私の理解では性奴隷状態です。

永井教授、ご回答ありがとうございました。』 (2007/04/04 08:05)

nagaikazu nagaikazu 『ebizoh様

問題はかなり複雑ですので、少し整理してみましょう。この整理の仕方でいいかどうか、それを確認してから進むことにしてはどうでしょうか。

 私のみるところでは、今までのわれわれのやりとりをふりかえってみて、議論すべき論点としては、以下の3つがあるように思えます。

1.英語のsex(ual) slaveあるいは、sex(ual) slaveryの解釈をめぐる問題、より限定すれば、アメリカ下院決議案で言及されているsex(ual) slaveryの解釈をめぐる問題と言いかえてよい。

1a.永井は、sex(ual) slaveryを「強制売春」と解釈する。

 sex(ual) slavery = forced prostitution説.

1b.ebizoh様は、sex(ual) slaveryを「強制売春」+女性に対する強度の虐待と解釈される。

 強度の虐待の具体例としては、アメリカ下院決議案で言及されている、gang rape, forced abortions, humiliation, and sexual violence resulting in mutilation, death, or eventual suicide...等(輪姦、堕胎の強制、恥辱、性暴力による身体損傷、死亡、自殺等)が想定されています。

 つまり、ただの「強制売春」では不足で、それに上記のような「強度の虐待」が加わってはじめてsex(ual) slaveryとよびうるとの立場です。

 sex(ual) slavery ≠ forced prostitution説.

 この1に関しては、不十分ですが、私は自説の根拠を提示しました。できれば、ebizohさんも、1b説の根拠を提示していただけるとさいわいです。

 

2.従軍慰安婦の実態をめぐる問題。言いかえれば、「従軍慰安婦の実態は「性奴隷」なのか、「強制売春」なのか、「自由売春」なのか」という問題。

2a. 永井は、「性奴隷」=「強制売春」説なので、そもそもこの三択問題がなりたたないという説であり、「従軍慰安婦の実態は「強制売春」なのか、「自由売春」なのか」という二択問題に対する正答は、「強制売春」だと考えている。ついでに言えば、いわゆる「広義の強制」は慰安婦リクルートに際して「Human Traffic=人身取引・人身売買」が行われていたことをさすものであるので、永井のいう「強制売春」には当然含まれている。

2b.ebizoh様は、「性奴隷」≠「強制売春」説なので、この三択問題が成り立つとする説であり、しかもそれに対する正答は、「公娼の戦地版という秦氏の説」にしたがって「自由売春ないし管理売春の一類型」とみなすべきだとの説をとる。

 つまり、「性奴隷」でもなければ、「強制売春」でもなく、三択なので「自由売春」だったとの結論となる。


3.「性奴隷」あるいは「強制売春」の「強制」の主体をめぐる問題(これは軍と慰安所との関係をめぐる問題に帰着する)。

 これがじつはいちばん中心に位置する問題なのですが、実態において「性奴隷」もしくは「強制売春」であったとして、その「強制」の主体は、軍なのか民間業者なのかという問題です。

 2b説に立つebizoh様からすれば、「強制」そのものがないわけですので、そもそも3は問題とはならないはずですが、ここでは、「もしかりにそうだとした場合」ということにしておきましょう。

3a. 永井は、拙論でも書いたように、軍慰安所は軍が設置した性欲処理のための後方施設であると把握しており、軍はその経営を民間業者に請け負わせていた。それゆえ、実際に慰安婦の募集と慰安所の運営に直接従事していたのが、民間業者だったとしても、慰安所の設置主体が軍であり、しかも慰安所では「強制売春」が行われ、かつ軍がそれを容認していた以上、「強制売春」の「強制」の主体は軍であり、それについて軍の責任は免れないと考える。


3b.ebizoh 様は、アメリカ下院決議案は「強制」の主体が日本軍あるいは日本政府としているが、それは事実誤認であり、慰安所の経営者慰安婦の募集に従事した女衒は、軍とは関係のない民間業者であった。かつまた、彼らは軍から「強制売春」することを命じられたのではない。それゆえに、「強制」の主体は軍=政府ではなくて、あくまでも民間業者であると主張される。

 

 学説史でいえば、3aは吉見・永井説であり、3bは秦説であるということになります。』 (2007/04/04 20:42)

nagaikazu nagaikazu 『ebizoh様

 ところで、以前私は、「従軍慰安婦の実態は強制売春か、自由売春か」は、最初から答えがでている問題だと言いました。それに対してebizohさんは、2b説を提示して、疑問を出されましたので、それに反論する意味で、簡単に補足しておきましょう。

 なお、これは以前のebizohさんのコメントにあった、Q4に対する回答でもあります。

 つい最近、軍の関与を否定する発言をされた下村博文官房副長官は、新聞報道によると、最初「従軍看護婦とか従軍記者はいたが、『従軍慰安婦』はいなかった。ただ慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う。だが日本軍が関与していたわけではない」と言ったようです。

 「ただ慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う」は、「人身売買により売春を強制された慰安婦がいた」と下村氏が認識していることを意味します。

 下村氏にかぎらず、「朝鮮人女衒が悪辣な方法で慰安婦を集めた。悪いのは、軍ではなくてそれらの業者だ」という認識を提示される方は、ネット上でもいやというほど見かけます。「慰安婦の実態は、自由売春で、強制性はまったくなかった」と主張される方を、私はほとんど見たことがありません。ここでの ebizoh様くらいのものです。

 また、それらの論者は、みな慰安婦制度は公娼制度の一種だから、当時合法であったと主張されますが、公娼制度が自由売春ではなくて、「事実上の強制売春」であったことは、周知の事実です。ですから、公娼制度の一種である慰安婦制度もまた「事実上の強制売春」にほかなりません。「慰安婦制度は公娼制度の一種」という主張の中に「従軍慰安婦の実態は、強制売春」との認識が最初から内包されているわけです。

 

つまり、日本では、「従軍慰安婦の実態は、強制売春である」との前提(すなわち2a説)のもとに、その「強制」に軍が関与していたのか、否かが、争点として争われてきたのです(この部分は、ebizohさんの以前のQ3に対する回答でもあります)。

 ですので、私は「従軍慰安婦の実態は強制売春か、自由売春か」は、最初から答えがでている問題だと言いました。しかし、ebizoh様はそうは考えておられないようです。是非2b説が正しいことを証明していただきたい。

 

 なお、管理売春は「強制売春」の一種です。

最後に、以前のQ5ですが、私は朝鮮戦争の際に、韓国軍が軍慰安所をつくったとの話を聞いたことはありますが、ベトナム戦争時のことは知りませんので、お答えできかねます。』 (2007/04/04 20:46)

ebizoh ebizoh 『>永井教授

分かり易く整理されたご回答、ありがとうございます。

>この1に関しては、不十分ですが、私は自説の根拠を提示しました。できれば、ebizohさんも、1b説の根拠を提示していただけるとさいわいです。

1a説については、英語圏でのsexual slaveryの通常の用語例ということには納得いたしました。

1b説は、米下院慰安婦決議案の事実関係中の日本軍慰安婦の実態がその通常の用語例の意味を越えるものを含んでいることを考慮した考えです。つまり、慰安婦決議案における日本軍慰安婦の実態に基づく用語例です。

>2.従軍慰安婦の実態をめぐる問題。言いかえれば、「従軍慰安婦の実態は「性奴隷」なのか、「強制売春」なのか、「自由売春」なのか」という問題。

永井教授の整理にほぼ同意いたしますが、一部だけ付言させてください。

>つまり、「性奴隷」でもなければ、「強制売春」でもなく、三択なので「自由売春」だったとの結論となる。

私の理解では、実態としてはおそらく強制売春のケースも自由売春のケースも両方あったと思います。

そのため、海老蔵説は、2b・3b混合説であり、自由売春のケースでは日本の国家責任も業者の責任も否定され、強制売春のケースでは3b説により国家責任が否定され業者の責任となります。

しかし、この点は、おそらく、自由売春と管理売春の意義の理解について、私と永井教授との間で差異がありその差異が3.にも影響すると思われますので、3.についての回答で詳述いたします。

>3.「性奴隷」あるいは「強制売春」の「強制」の主体をめぐる問題(これは軍と慰安所との関係をめぐる問題に帰着する)。

>これがじつはいちばん中心に位置する問題なのですが、実態において「性奴隷」もしくは「強制売春」であったとして、その「強制」の主体は、軍なのか民間業者なのかという問題です。

同意いたします。

違法な強制の主体となった場合に法的責任を基礎付けられるという私の理解とも合致しております。

>学説史でいえば、3aは吉見・永井説であり、3bは秦説であるということになります。

同意いたします。

>以前私は、「従軍慰安婦の実態は強制売春か、自由売春か」は、最初から答えがでている問題だと言いました。それに対してebizohさんは、2b説を提示して、疑問を出されましたので、それに反論する意味で、簡単に補足しておきましょう。

>なお、これは以前のebizohさんのコメントにあった、Q4に対する回答でもあります。

>「慰安婦の実態は、自由売春で、強制性はまったくなかった」と主張される方を、私はほとんど見たことがありません。ここでのebizoh様くらいのものです。

上記2.についてのコメントでふれたように、一部誤解があります。

そして、その誤解は自由売春と強制売春の意義の理解の差異からも生じていると思われますので、後ほど。

>それらの論者は、みな慰安婦制度は公娼制度の一種だから、当時合法であったと主張されますが、公娼制度が自由売春ではなくて、「事実上の強制売春」であったことは、周知の事実です。

周知の事実ではなく、一部の論者の考えにすぎません。

行為当時の法解釈によれば、公娼制度の枠内であれば合法であり、強制売春ではありません。実態として、公娼制度の枠を越える搾取虐待などのケースがあった場合には強制売春にあたるので、このケースだけを事実上の強制売春と呼ぶのであれば、異論はありません。

公娼制度の一種である慰安婦制度もまた「事実上の強制売春」にほかなりません。「慰安婦制度は公娼制度の一種」という主張の中に「従軍慰安婦の実態は、強制売春」との認識が最初から内包されているわけです。

>つまり、日本では、「従軍慰安婦の実態は、強制売春である」との前提(すなわち2a説)のもとに、その「強制」に軍が関与していたのか、否かが、争点として争われてきたのです(この部分は、ebizohさんの以前のQ3に対する回答でもあります)。

>ですので、私は「従軍慰安婦の実態は強制売春か、自由売春か」は、最初から答えがでている問題だと言いました。

これも、前述コメント同様の理由で、誤解だと思います。秦氏その他の3b説の学者に質問されてみることをお勧めします。おそらく私とほぼ同じ答えが返ってくると思います。

>しかし、ebizoh様はそうは考えておられないようです。是非2b説が正しいことを証明していただきたい。

 

上記において説明したとおり、海老蔵説は、2b・3b混合説であり、秦氏などの3b説の中にも、同じ論者はいると思います。

>なお、管理売春は「強制売春」の一種です。

この考えは、管理売春が違法化された売春防止法施行後にのみ成り立ち得る解釈でしょう。同法施行以前の行為当時は、管理売春も自由売春の一種です。

>最後に、以前のQ5ですが、私は朝鮮戦争の際に、韓国軍が軍慰安所をつくったとの話を聞いたことはありますが、ベトナム戦争時のことは知りませんので、お答えできかねます。

この点は、一部私の記憶違いがあったために、修正して質問させていただきます。

Q5-2:朝鮮戦争時の韓国軍慰安婦は、韓国人研究者金貴玉氏によると、軍の第五種補給品扱いだったそうです(2002年2月24日立命館大学での国際シンポジウム)が、ある意味で軍の施設で働く人間よりも非人道的な扱いであり、国家責任が日本より強く生じてしまいかねないと思いますが、この点はどうお考えでしょうか?私は旧日本軍慰安婦にも朝鮮戦争時およびベトナム戦争時(金氏が当該事実をつかんだのは1996年頃なので、それまで問題とならなかった以上、朝鮮戦争時と同じ扱いだと私は推測します)の韓国軍慰安婦にも法的責任は生じないと考えておりますが。

貴重なご研究の時間の合間でかまいませんので、ぜひ今後ともご教授くださいませ。』 (2007/04/05 00:05)

ebizoh ebizoh 『>永井教授

重ね重ね恐縮ですが、追加の質問です。

Q6:永井説は、(吉見説-陸支副官通牒の吉見解釈)+(陸支副官通牒および内務省警保局長通牒の永井解釈+永井慰安所兵站施設論)=日本の法的責任肯定、という構造だという海老蔵の理解は、正しいでしょうか?

ご研究の負担にならない時間で結構ですので、どうぞよろしくご教授お願いいたします。』 (2007/04/05 01:56)

ebizoh ebizoh 『>永井教授

補足ですが、海老蔵説は、秦説に基本的に従っており、私は秦説こそが2b・3b混合説の元祖だと考えています。

根拠は、秦郁彦慰安婦と戦場の性』には、

『慰安所の設置や運営、女性の募集は民間業者が行なった。募集は、新聞広告による穏やかなものから、甘言、誘惑、借金のかた、人身売買などあくどいものまで、さまざまな形態があり、これを一般化するのは無理である。』というような記述があるからです。

つまり、秦説は、私の前述の用語法における自由売春、管理売春、事実上の強制売春の全ての類型にあたる様々な実態があったという理解であり、私も同様の理解です。』 (2007/04/05 07:30)

ebizoh ebizoh 『>永井教授

補足その2ですが、韓国軍慰安婦についての私の知識は秦郁彦『歪められる日本現代史』p108から得ており、その新聞報道をテキスト化したものがWEB上にありましたので、ご紹介しておきます。

http://www.tamanegiya.com/kannkokugunniannfu-.html』 (2007/04/05 07:43)

nagaikazu nagaikazu 『ebizoh氏への回答

 まず、私の問題整理に合意していただいたことに、お礼申し上げます。よって、以下では、私が整理した論点にしたがって、議論を進めていくことが、そのご好意に報いる方法だと考えて、お答えすることにいたします。

1の論点について

 まず、sex slavery= forced prostitutionというのが英語の一般的な語用法であることについては、合意いただけたものと考えます。論点の整理法につづき、この問題に関しても、一致点がみられたことは、お互いに喜ぶべきことだと思います。

 としますと、1の論点で引き続き問題となりそうなのは、以下の諸点ではないかと思われます。

1-1:下院決議案中のsex slaveryが、上記の英語の一般的な語用法とは異なる特殊な意味合い(すなわちebizoh様が主張されるforced prostitution+extreme sexual abuseの意味で)使用されているのではないか。

1-2:下院決議案sex slaveryは、とくに一般的な語用法からはずてているわけではないが(つまり1-1は否定されるが)、sex slaveryを日本語の「性奴隷」と翻訳する際に、「性奴隷」という語感から、無意識のうちに、forced prostitutionだけでなく、extreme sexual abuseの意味が付加されてしまったのではないか。

 つまりこれは、下院決議案での語の使い方の問題ではなくて、sex slaveryの日本語翻訳によって生じた問題だということになります。

1-3:問題とすべきは、上記のような下院決議案中のsex slaveryの語用法ではなくて、下院決議案が「従軍慰安婦の実態」および「軍と慰安所・慰安婦との関係」について、事実誤認していることこそが問題なのではないか。

 この場合の事実誤認とは、

1-3-1:下院決議案が、「従軍慰安婦制度をもって「強制売春」とみなしたうえで(2b説)、さらに一部においてextreme sexual abuseがみられたとして、最悪の「強制売春」であると断定している点(+extreme sexual abuse説)と、

1-3-2:従軍慰安婦制度をもって日本政府による強制売春制度とみなしている点(3a説に立っている点)

ということになるかと思います。

 問題1-1が想定しているような語用を下院決議案がしているのであれば、アメリカ国内や英語に通じた日本人から、すでにそのことが指摘されたはずだと考えられますので、いまのところそのような指摘がない事実を考慮すると、1-1は、これ以上議論すべき問題とは思えません。

 さらに、英語がそれほど得意とも思えない、われわれ二人で議論しても、不毛な結果に終わるのは目に見えていますので、この問題1-1はこれ以上とりあげる必要はないかと思います。

 また問題1-2は日本語の翻訳の問題ですので、下院決議案提出者やそれを支持するアメリカ人に責任はありません。日本語の翻訳が正しいかどうかは、たしかにひとつの問題ですが、ここで議論すべきことだとは思えません。

 

 また、問題1-3は、もはやsex slaveの語義、語用の問題ではなく、「従軍慰安婦の実態」および「軍と慰安所、慰安婦との関係」に関わる問題ですので、論点2と3に帰着します。

 ですので、1についてはこれ以上の議論は無用かと思います。

 もし、この点について何か御意見があれば、指摘してください。なければ、次ぎに論点2に進みたいと思います。』 (2007/04/06 14:01)

nagaikazu nagaikazu 『訂正です。

1-3-1:下院決議案が、「従軍慰安婦制度をもって「強制売春」とみなしたうえで(2b説)、さらに一部においてextreme sexual abuseがみられたとして、最悪の「強制売春」であると断定している点(+extreme sexual abuse説)、

上記は誤りで、正しくは、

「強制売春」とみなしたうえで(2a説)

です。謹んで訂正いたします。』 (2007/04/06 14:05)

ebizoh ebizoh 『>永井教授

まことに的確で分かりやすい原因分析、ありがとうございます。

今まで何度も言われて聞き飽きていらっしゃるでしょうから、私などに言われても今さらと思われるかもしれませんが、永井教授は大変smartですね。

>問題1-1が想定しているような語用を下院決議案がしているのであれば、アメリカ国内や英語に通じた日本人から、すでにそのことが指摘されたはずだと考えられますので、いまのところそのような指摘がない事実を考慮すると、1-1は、これ以上議論すべき問題とは思えません。

>われわれ二人で議論しても、不毛な結果に終わるのは目に見えていますので、この問題1-1はこれ以上とりあげる必要はないかと思います。

同意いたします。

>問題1-2は日本語の翻訳の問題ですので、下院決議案提出者やそれを支持するアメリカ人に責任はありません。日本語の翻訳が正しいかどうかは、たしかにひとつの問題ですが、ここで議論すべきことだとは思えません。

同意いたします。

ただ一言付言させていただくと、この問題とは別に純粋にドメスティックな問題1-2bとして、吉見氏が最初に日本語で慰安婦は性奴隷制だという主張をされた時に、本来の意図する意味がsexual slavery=強制売春だったのにもかかわらず、あえて日本語の通常の用語例としてはそれより強度の搾取虐待などの意味である性奴隷制という直訳的な言葉を使ったのだとしたら、世論の支持を得るためにあえてどぎつい言葉を使ったのではないだろうか?という疑問が湧きます。

永井教授も、もし本来の意図が慰安婦制度は国家による強制売春制度というご主張なのであれば、今後はその旨の用語例に従っていただけると、性奴隷制という用語を使ったときの日本国内での議論の紛糾をもたらさずに良いかと思われますが、いかがでしょうか?

>問題1-3は、もはやsex slaveの語義、語用の問題ではなく、「従軍慰安婦の実態」および「軍と慰安所、慰安婦との関係」に関わる問題ですので、論点2と3に帰着します。

同意いたします。

>ですので、1についてはこれ以上の議論は無用かと思います。

>もし、この点について何か御意見があれば、指摘してください。なければ、次ぎに論点2に進みたいと思います。

上記問題1-2b以外の点では、特に意見はなく、同意いたします。

貴重なご研究の時間の合間を縫ってのご回答、誠に有難うございました。』 (2007/04/06 21:25)

nagaikazu nagaikazu 『ebizoh様

>上記問題1-2b以外の点では、特に意見はなく、同意いたします。

 ということですので、問題2に進みたいのですが、その前に、ebizoh様追加された1-2bに対して、私の意見を申し述べておきます。

 まず、英語のsex slaveryと日本語の「性奴隷制」とでは、意味が少しちがっており、後者の外延のほうが前者のそれより小さい、言いかえれば、英語では一般的に「強制売春」の意味であるのに、日本語の「性奴隷制」は極度の虐待や酷使を伴う「強制売春」との意味合で使われることが多いのは、現実に存在している言語的事実であると私も認めます。そして、ebizoh様(はじめ多くの方が)は下院決議案のsex slaveryをそのような意味での「性奴隷制」として受け取ったこと、も。

 その点を考慮して、ここでの議論では、無用の誤解を避けるために、sex slaveryの訳語としては、私は「強制売春」を使用し、「性奴隷制」を使わないことにしてきましたし、これからもそのようにするつもりです。

 しかしこのことは、「従軍慰安婦の実態は日本語の意味での「性奴隷制」ではなかった」と、私が最初から主張していることを必ずしも意味するのではないという点を、ご理解ください。

 前回の整理で言えば、

1-3-1:下院決議案が、「従軍慰安婦制度をもって「強制売春」とみなしたうえで(2a説)、さらに一部においてextreme sexual abuseがみられたとして、最悪の「強制売春」であると断定している点(+extreme sexual abuse説)

 もしも、この1-3-1が、ebizoh様が主張されているような誤解ではなくて、正解であったとすれば、ebizoh様がまさにそのように感じたごとく、「従軍慰安婦の実態は(日本語の意味での)「性奴隷制」だった」ことになりかねませんので。

 つまり、この問題も、結局は2の問題(というかその付随問題)に帰着するわけです。もっとも、私の主たる関心は、「慰安婦制度は国家による強制売春制度であった」と主張する点におかれていますから、「日本語の意味でも「性奴隷制」であったか、どうか」は、あくまでも付随的な問題にとどまります。

 それから、1-2bにおいて、ebizoh様は、吉見氏が「性奴隷制」という言葉を使ったのは、「世論の支持を得るためにあえてどぎつい言葉を使ったのではないだろうか」と邪推されていますが、私にはわかりません。もしお疑いならば、吉見氏に直接質問されてみることをお勧めします。

 

 ただ、吉見氏の『従軍慰安婦1995年は、全部で234頁の本ですが、「性奴隷」「性的奴隷」という言葉が登場するのは、4カ所です。いずれも、「性(的)奴隷」は「強制売春」あるいは「売春を強制させられている女性」という意味合いで使用されています。

1)「「従軍慰安婦」とは日本軍の管理下におかれ、無権利状態のまま一定の期間拘束され、将兵の性交の相手をさせられた女性たちのことであり、「軍用性奴隷」とでもいうしかない境遇に追い込まれた人たちである。」(11頁)

 これは、「従軍慰安婦」の定義のようなものですが、「無権利状態のまま一定の期間拘束され、将兵の性交の相手をさせられた女性たち」からは、「売春を強制させられた女性」という以上の意味を読み取るのはむずかしいでしょう。

2)「以上のような環境のもとで、軍慰安所の女性たちは、日々、日本軍の将兵から性的奉仕を強要されつづけていた。日本軍は、このような女性を大量に抱え込みながら、彼女たちを保護するための軍法を何もつくらなかったのである。事実上の性的奴隷制である日本国内の公娼制でも、十八歳未満の女性の使役の禁止、外出・通信・面接・廃業などの自由を認めていたが、この程度の保護規定すらなかった。従軍慰安婦とは、軍のための性的奴隷以外のなにものでもなかったのである。」(158頁)

 「以上のような環境」として吉見氏は、「性交の強要」「酒を飲んでの暴行」「少ない休日」「実質的な手取りの少ない報酬」「厳しい監視」「経済的・精神的拘束」「苦痛からのがれるための麻薬の常用」「性病伝染」「病死・自殺心中強要」などの諸項目をあげています。これらの項目は「極度の性的虐待や酷使」ともいえなくもないですが、そうすると、通常の公娼制も事実上の「極度の性的虐待や酷使」と吉見氏が解釈していることになりますが、そこまでいっているようには思われません。なぜなら、公娼制度を3)のように規定しているからです。

3)「公娼制度は、まさに人身売買、性の売買と自由拘束を内容とする事実上の性的奴隷制だったのである」(227頁)

 公娼制度とは「人身売買と自由拘束によって女性に売春を強要する制度だから性的奴隷制だった」という論理構造になっています。「人身売買と自由拘束によって女性に売春を強要するばかりでなく、さらに極度な性的虐待を加え、女性を酷使する制度だから性的奴隷制だった」と言っているわけではありません。

4)「(もっとも、公娼制度における権利を過大視することはできない。この点で慰安婦を「売春婦型」と「性的奴隷型」にわける見解には同意できない)」(231頁)

 この部分は、慰安婦たちは「公娼制度のもとで(娼妓には)認められていた廃業の自由や通信・面接の自由さえ保障されない、まったくの無権利状態であった」と述べたあとに、ただし書きとして付加された部分です。つまり、慰安婦公娼制度の娼妓とは質的に断絶したものとみる見方に、吉見氏は反対しているわけです。ここでいう「売春婦型」とは、公娼制度の娼妓と同等の待遇にある慰安婦をさし、「性的奴隷型」とは、公娼制度の娼妓と比べてもさらにひどい待遇しか受けない慰安婦をさします。つまり、吉見氏が否定している「性的奴隷型」の「性的奴隷」こそ、ebizoh様が理解している日本語としての「性奴隷」にほかなりません。吉見氏は、そういう区別をするのはあまり意味がないとしているのですから、慰安婦公娼制度の娼妓との連続性を重視する立場といえます。』 (2007/04/08 19:07)

nagaikazu nagaikazu 『 少し、1-2bに対するコメントが長くなりましたが、ここで本題である論点2、すなわち「従軍慰安婦の実態は、強制売春か自由売春か」という事実問題の検討に入ることにします。

(付随的に、「強制売春」だとしても、はたして下院決議案で言及されているような、極度の虐待が実際におこなわれていたのかどうかも、問題となります。)

 

 この点に関して私の立場はすでに明らかにしましたように、「従軍慰安婦の実態は、強制売春であり、自由売春ではなかった」という認識(2a)ですが、 ebizohさんは、「一部には、売春を強制された例もあったが、基本的には従軍慰安婦の実態は、自由売春であった」(2b説)というものです。

 そして、3bにより、その「強制売春のケース」についても、軍および国に法的責任はないという主張が続きます。

 なお、前のコメントで、ebizoh様の2b説を「従軍慰安婦の実態は、自由売春で、強制性はまったくなかった」だと書きましたが、それは誤解だったようですので、正確には、2b説は「一部には、売春を強制された例もあったが、基本的には従軍慰安婦の実態は、自由売春であった」に修正いたしました。

 それに対応して、私の2a説も、正確には「一部には、自由意志慰安婦となった例もあったが、基本的には従軍慰安婦の実態は、強制売春であった」ということになります。

 これ以降は、修正されたものをあらためて2a、2bとします。念のために再掲します。

2a:「一部には、自由意志慰安婦となった例もあったが、基本的には従軍慰安婦の実態は、強制売春であった」(強制売春説)

2b:「一部には、売春を強制された例もあったが、基本的には従軍慰安婦の実態は、自由売春であった」(自由売春説)

 軍および国の責任については3の論点ですので、あとで検討することにして、論点を単純にするために、ここでは「従軍慰安婦の実態は強制売春か自由売春か」に問題をしぼります。』 (2007/04/08 19:11)

ebizoh ebizoh 『>永井教授

大変分かりやすいご解説、誠に有難うございました。

教授のご解説によって、吉見説の内容もより正確に理解できました。

その他の点のご解説も、大変勉強になりました。

2a説2b説の内容の修正についても、異論はありません。

ぜひ、今後とも、貴重なご研究の時間の合間で結構ですので、ご教授くださいませ。

2.の中心論点である従軍慰安婦の実態論についても、教授のご解説を楽しみにしております。』 (2007/04/09 01:53)

nagaikazu nagaikazu 『 ebizoh様へ

 さて、私は「従軍慰安婦の実態は強制売春か自由売春か」かはすでに結着のついている問題だと書きました。その論拠として、軍の関与と国の責任を否定する論者(すなわち3b説に立つ論者)自身が、従軍慰安婦の実態に関しては、いずれも2a説に立っており(すなわち2a・3b説)、2b説に立つ論者(2b・3b説)は(ebizoh様以外には)ほとんどいないという事実をあげ、実例として下村官房副長官の発言をあげました。

 それに対して、ebizoh様は、それは誤解であり、3b説の論者はみな自分と同じ2b・3b説だ。ちがうというなら、3b説の論者に聞けばよいと返答されました。

 残念ながら、直接聞くわけにはいきませんので、そのかわりに3b説と思われる論者の発言を調べてみました。

 まずくどいようですが、下村官房副長官にもう一度登場願いましょう。

 新聞報道によりますと、下村氏は、最初「従軍看護婦とか従軍記者はいたが、『従軍慰安婦』はいなかった。ただ慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う。だが日本軍が関与していたわけではない」と言ったそうです。

 下村氏が3b説であることは疑問の余地がありません(あとで一部否定されたわけですが)。しかし、その前の「ただ慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う」は、「人身売買により売春を強制された慰安婦がいたのは事実だ」と下村氏が認識していることを意味します。

 ここで注意すべきは、下村氏が「ただ慰安婦がいたことは事実。親が娘を売ったということはあったと思う。しかし、それは例外的であって、ほとんどの慰安婦は自らの意志で慰安婦となったのである」とは言わなかった点です。

 下村氏が2b説であるなら、当然そう言わなければいけないところなのに、そうは言わなかった。このことから、明示的に主張しているわけではないとしても、実質的に下村氏も2a説だと私は理解しました。』 (2007/04/10 01:44)

ebizoh ebizoh 『>永井教授

>3b説の論者はみな自分と同じ2b・3b説だ

いえ、読み返せばお分かりになると思いますが、そこまで断定はしていません。

>秦氏などの3b説の中にも、同じ論者はいると思います。

>私は秦説こそが2b・3b混合説の元祖だと考えています。

>根拠は、秦郁彦慰安婦と戦場の性』

としか述べておりませんので。

下村氏がどちらの説であるかはこの際余り問題ではないと思いますし、修正後の2a・2b説も、どちらが基本形態であるかという争いしかないので、永井教授さえよろしければ、次回以降は3.についての教授の分かりやすくて勉強になるご解説をしていただけると有難いと思います。

今後とも、貴重なご研究の合間の時間で結構ですので、ぜひご教授くださいませ。』 (2007/04/10 09:36)

ebizoh ebizoh 『

>永井教授

補足させて頂きますと、上記コメントで3.と書いたのは、慰安婦の実態論という2.の中心論点を論ずるに際して、公娼制、自由売春、管理売春、強制売春という用語の意味内容および実態についての理解の差異がそのまま3.の議論とも密接に関わっていることを前提としており、2.実態論、3.強制の主体論という教授の論点整理を否定する意図ではありません。

厳密に言えば、やはり、2.実態論の中心論点として論ずるのが正しいと思います。』 (2007/04/11 20:50)

返信2007/04/12 21:24:55
  • 1「強制売春説」など noharranoharra 2007/04/12 21:24:55
    nagaikazu nagaikazu 『 ノーモア様へ  はじめまして。永井和と申します。ふとしたことから、私の論文の解釈が議論になっているのを知り、このblogにたどりつきました ...